背後を少し気にしているとさっそく二人は話し始めていた。

「暖くん、分からないこととかあったらいつでも聞いてね」と照れ笑いをしながら優しい口調で話すチカはやっぱりかわいくて。

容姿の整っている2人はきっとお似合いだろう、と思ってしまった。

「チカさん、って言うんだよね?ありがとう」
見ていなくても声を聞くだけで分かる。きっと暖は、優しい顔をしている。

あの人はきっと私だけじゃない。皆にすごく優しくて、暖かい。
私はたまたま少し早めに出会っただけで特別なことなんてなにもない。

それを理解しておかないと。

休み時間がくるとチカは暖にずっと話しかけていて私に突っかかることが今日は一度もなかった。
嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちが頭の中を巡る。

こんなことをうじうじ考えていても仕方ないことは分かっているのに。
私はいつもより授業に集中できないまま一日を過ごした。

その日は時計の針が止まったかのように1秒が十分のように長く感じた。放課後がやっときてくれた事に安堵する。

後ろを見てみると暖の姿はなかった。もう帰ったのかもしれない。

そんな時チカと佳奈の声が聞こえてきた。

「ねえチカ!もしかして暖くんといい感じなの?めっちゃイケメンじゃん」

「もう佳奈やめてよ、そんなことないから。それにまだ暖くんのこと全然知らないし」

「えーそうなのー?」

私は一刻も早くこの空間から出たくなってイヤホンをつけてすぐに耳を塞いだ。