「冷ー!!はやく!こっちこっち」

「もうー、チカ待ってってば」

「なんであいつあんなはしゃいでんだよ?」


あの日から、もう5年の月日が経っていた。

私達は今日、暖のお墓参りに行くのだ。あの時から私は毎日のように小説について学んだ。

元々本が好きだったから苦ではなかったけれど大変ではあった。文書の書き方や表現、どうしたら暖のように素敵な言葉を綴れるか考える毎日だった。

「でも、本当にすごいよね…もうあれから5年だけど冷が本当に小説家になっちゃうなんてね」

「そうだな、あいつも多分大喜びだろ」

そうやって話す二人は以前よりも大人びていて。

5年も経っているのだから当たり前だけど少し不思議な気持ちになる。

チカと透和くんはあれからもずっと仲良くしてくれている。最初こそチカと透和くんはなんだかバチバチしていたけれどすぐに打ち解けた。

たまに喧嘩をしてる時もあるけれどなんだかんだ言って2人は相性がいいように感じる。

「ふふ、そうだといいな。でも私なんてまだまだだからこれからもっと頑張るよ」

「またまたぁー!謙遜しなさって!」
「まぁ、逆にチカは自分のこともっと謙遜した方がいいと思うけどな」
「はぁ?!何それひどくない?!」

ギャーギャーと後ろで騒いでいる二人を見ているとクスッと笑いがこみあげてくる。

「…暖、私ね今すごく楽しい。小説もまだ一作だけど書籍化されたんだよ。これからもっとたくさんの物語を作りたいと思ってる」

私は今、珈琲を片手にそして太陽に照らされてキラキラと輝く暖からもらったクラゲのキーホルダーを鞄から揺らしている。

ねぇ、暖。私は大人になれたかな。昔は少し苦く感じた珈琲も今は飲めるようになったんだよ。

上手くいかないことばかりの冷たい世界。
大事な人を奪っていく悲しい世界。


それでも君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かくて。

私が冷たいと思っていたこの世界でも君がいた世界なら少しは愛せる気がするんだ。