「まだ、行きたいところあるんだ。冷、一緒にきてくれる?」

いつものような暖かい笑みを向けてくれる暖。
まるで今日いなくなるかもしれないなんて嘘なんじゃないかと思ってしまう表情だった。

本当に、嘘だったらどれほど幸せだろうか。

そんなことを考えながら私は「もちろん!一緒に行こう」と返した。

次に私たちがついた場所は"公園"だった。
そう、普通の変哲もない公園だ。

でもそこは私達にとっては特別な場所だった。昔に二人が出会った場所、大切な約束を交わした場所。

「暖は、約束ちゃんと守ってくれてたんだね」

「 うん、一度だって忘れてないよ。冷への気持ちもずっと変わらなかった、これからも…変わらないよ」

「ふふ…っありがとう、私もだよ」

"これからも変わらない"

暖がいない日常がくるかもしれないことを想像できなかった。こんなに話をして、今目の前にいる人がいなくなるなんて信じられない。

そんな思いに浸っていると隣から「…っぅ…」と苦しそうな声が聞こえる。

「っ…!!暖、…!」

「…っはぁ…大丈夫だから。でももうそろそろ帰らないとだね」

私はそういう暖に「そうだね」と言って涙が込み上げてくるのを必死に抑えた。

病室に戻ってからも暖は苦しそうにしていた。
ただ見ていることしかできない自分が嫌いだ。なんでこんな時に私は何もできないのだろうか。

そんなふうに思って暖の手を握ることしかできない私に暖は語りかけるように話し始めた。

「冷…君はね今も自分のことを否定してるのかもしれないけどそんなことしないで。だってこんなにも優しくて良い子なんだから…っ」

私の心を見透かすかのようなその言葉に抑えていた涙は結局溢れ出てきた。

「っ…冷に出会えて本当によかった、僕はこの世界に生まれてよかったよ、だって君に会えたから」

「うっ…うん、うん」

大粒の涙をポロポロと流しながら私は頷くことしかできない。

「少し先に行くだけだからまた会えるよ。だから…泣かないでよ、冷」

私の頭を何度も優しく撫でてくれる暖。

応えないと、暖の想いに。
「うん…絶対にいつか会いにいくから…っ!暖に何度も助けられたよ」

涙でぐしゃぐしゃの不細工な私が今できる不格好な精一杯の笑顔でそう伝えると暖は優しく、今までで一番暖かい笑顔で、

「ふふっ…それが見たかった」

と言ってくれた。
私には笑ってなんて言いながら暖も泣いているじゃないか。