私たちの"小説作り"は順調に進んでいた。

けれどそれと比例するかのように、暖の体調は徐々に悪くなっていった。
今まではそんなそぶりもなかったからこそ、こうなってくると暖がいなくなってしまう事実が重く伸し掛るように感じた。

「ぅっ、ごほっ…」

心臓のあたりが苦しそうに痛む暖の姿が苦しい。
私は何もないはずなのにきゅっと心臓のあたりがズキズキと痛む。

「暖…無理しないで。少し休もう」
「ん、大丈夫だよ。心配しないで」

そうやって微笑む彼はどこから見ても青白い肌をしているのに私を不安にさせまいと優しい声で返してくれる。

そんな日々が続く中、ついに暖が入院をすることになった。これ以上は安静にしていないと危険だと、医師から言われたそうだった。

私が不安そうにしていると「安心して、病院でも小説は書けるし冷とも話せるよ」と返してくれる。

一番辛いのは暖のはずなのに。

「…うん、そうだね」
私は涙がこぼれ落ちそうなのをなんとか止めて今できる精一杯の笑顔でそう返した。

学校のある時間は暖に会えない。
暗い雰囲気の私をチカは心配そうに見ていた。

「冷、大丈夫?顔色悪いよ」
「あ…うん、大丈夫だよ」
ははっと笑って返してみせるが覇気のない返事は何の説得力もなかった。

「暖くん…のことだよね」
少し言いづらそうにしているチカの様子からするときっとチカも何となく暖の状況を察しているのかもしれない。

急に学校にこられなくなったこと、そして暖との過去を思い出した時の私の行動はあまりにも点と点を繋げてしまうような出来事だった。

桐生くんは学校に元々あまり行っていなかったのもあって今も暖の病室に行っているらしい。

私もそうしようと思ったけれど暖に断られてしまった。

『冷にはちゃんと幸せになってほしいんだ、そんなに休んで進路にでも響いたら大変だよ。僕は大丈夫だし放課後に会えるだけでも嬉しいから、ね?』

そうやって言ってくれる暖のことを思い出す。

桐生くんがいてくれているから心配はないと思うけどそれでもやっぱり寂しくて、何もできないことが苦しかった。