____暖がそうしてくれたように。

パッと暖の方を見ると彼の目元からは一筋の涙が流れていた。

「は、はる!大丈夫…?」
さっきまで落ち着いていたのが嘘かのように私は慌ててしまう。

けれどそんな不安はすぐに吹き飛んだ。

「っ大丈夫…大丈夫だよ。冷があまりに優しいからさ」と泣きながらもはにかみながら暖は言った。

すぅーっと深呼吸を何度かしてから暖が口を開いた。

「冷はほんとに昔から優しいけど少しだけ変わったね。前よりももっと強くて素敵な女の子になった」

そんな暖の言葉に驚き、少し照れくさくなってしまう。私は黙ってその後も暖の言葉を聞いた。

「今から始めても、この地球上の誰の目にも入ることなんてないかもしれない。書き終わることもできないかも…」

彼の言葉を聞いて私も苦しくなる。やっぱり私は考えなしなのだろうか。
けれど暖はまた口を開いた。

「でも、この世界にはまだ君がいる。冷」
「っ…!!」
「誰に読まれなくても冷に読まれるならそれでいい、終わらなくても冷がいるからきっと大丈夫だと思う」

それはまるで私を世界で一番信用しているかのような言葉であまりにも暖かくて私にとってとても嬉しいものだった。

「冷がいてくれて本当に…本当によかったよ。ありがとう」

そうやって微笑む彼は太陽のように輝いているのに今にでも消えてしまいそうに儚く見えた。

「私も暖がいてくれてよかった」

暖と私はその日から小説を書き始めることにした。
元々私は本が好きだし役に立てることもあるかもしれない。それに暖といる時間がすごく増えた。

____幸せで心地良い時間。大好きな人と大好きなものの話をして、笑顔で過ごすの。

まるで夢のようでいつまでもいつまでも終わってほしくないと思った。