「僕ね、小さい頃から自分の容姿が嫌いだった。でもね、冷が認めてくれたんだよ。まだ小さくて、同い年なはずなのに強くて優しくて…」

暖の腕はさっきよりも、私を抱きしめる力が強くなる。

「冷はずっと変わらないね。ずっと優しくて素直なままだよ、自分にもっと自信をもっていいのに」

その声はスっと耳にはいってきて、心地よくて、私が昔から大好きな人の声だった。
暖の肩が私の鼻水や涙のせいで濡れてしまっている。

「暖っ…肩、汚れちゃうから」
そう言って私が暖から離れようとする。
けれどそれはすぐに制止されてしまって、暖の方へと引き寄せられる。

「…ごめん、もう少しだけこういさせて」
その暖の声は今までに聞いた事がないほどにか細くて、寂しくて、幼い子供のようだった。

「うん…」
私たちは苦しくなるほどに強く抱きしめあった。

どれくらい時間が経ったのか分からない。
そんな時ふと暖が手をゆっくりと離した。

上を向いて暖の顔を見ると目元は赤く染まっていて、涙の跡がほんのりと残っていた。

暖がゆっくりと口を開く。
「…もう少しだけ話してもいい?」
「うん、もちろん」

私たちはいつもよりも静かな空間の中でぽつぽつと話し始めた。

「冷はどうやって思い出したの?」
「桐生くんと…話してたんだ。それで思い出した」
「ははっ…透和かぁ。すごいなほんと」
嬉しそうに笑う暖に、今まで聞いたことがなかったことをふと聞きたくなった。

「暖と桐生くんってどうやって仲良くなったの?」

私の問いに一瞬目を丸くしてすぐに「そうだなあ」と暖は懐かしさを感じるように思い出話を語ってくれた。