「お父さん…ただいま」
「冷、おかえ…っ!」
お父さんが私が泣いている様子にびっくりしている。

「どうしたんだ?何かあったのか?」
私の顔を覗き込んで不安そうに目が揺らいでいる。

「仲良くしてた転校しちゃった男の子…病気なんだって。せっかく約束したのに。」

わんわんと泣き出した私に目を見開いていた。
もしかすると、もうお父さんは暖が病気のせいで転校してしまったことも全部知っていたのかもしれない。

「…っうぅ、やだよ」

「冷、大丈夫だよ。まだ分からないじゃないか。
助かる確率だってあるんだ、それに約束したんだろ」

それは夢で見た時の光景だった。

「っでも…!お母さんは病気のせいでいなくなった!!きっと暖も…っ!」

私はさっきからずっと抑えていたものを全て吐き出してしまう。まるで壊れたおもちゃかのように、ずっとずっと泣き続けた。

その日からは私はまるで魂が抜けたかのような日々を送っていた。毎日行っていた公園にも行かなくなった。

「冷、ご飯食べるか?」
「大丈夫…お腹減ってない」

お父さんが私のことをすごく心配していたのは子供の私でも分かっていた。でも無理だった。

元気なんてでる訳がなかった。
小さくてまだこの気持ちが何か気付かなかったけれどこれはきっと恋だった。

私にとってきっと暖という人は初恋の相手だった。

そんな日々を過ごしていた時、私はある事故に巻き込まれてしまったのだ。