でも、現実はそう甘くはなくてある日私は絶望させられた。
暖がいなくなってから、私は一人で公園で遊ぶようになった。またいつ暖がきても会えるように。

そんな時、近所のおばさん達の会話が聞こえてきた。
「…気の毒よねぇ」

「あそこの奥さんのお子さんでしょ?心臓の病気だったそうね、それで転校だなんて…」

「長くも生きられないらしいわよ、この歳からじゃ20年も生きられるかどうか…」

"転校"というフレーズに私は心臓がどくりと鳴った。
病気、生きられない…私は暖のことだったらと悪い方向に想像を膨らましてしまう。

でも、そんなことないはず。だって約束したじゃないか、会いに行くって。

けれど私の少しの希望すらも、次の一言であっけなく崩されることとなった。
「それに生まれつきあの髪色はねぇ…」
「綺麗だけど、今どきの子にはあれは可哀想よね」

ここら辺で髪色が変わっているなんて子は一人しかいなかった。いやでも、もしかすると他にも。

私はそんな自分の考えを馬鹿馬鹿しくおもう。信じたくなかったのだ、暖が病気だなんて。

なんで言ってくれなかったの?
もし、本当に20年も生きられなかったら…私は暖と会うことができるのかな。

けれど確実なんてありえない。生きる可能性だって、病気が治る可能性だって…。

そんな時にふと病気に負けて死んでしまったお母さんのことを思い出す。

「でも、お母さんは…」

私はあまりにも小さくか細い声をもらした。
ぽつぽつと雨が降ってきた。まるで、私の涙をかき消すかのように。

私は結局、そのまま家に帰った。