暖と私が…高校に入る前よりもっと昔に会っている。

ズキンッ…!

先程よりも痛みが増していて、頭が割れそうだ。
まるで誰かが、私の記憶を封じ込めようとしているかのように。思い出さないでというように。

それでも……私は。
私は自分の頭に逆らうかのように痛みに耐えながら必死に過去のことを振り返る。

暖かくて、優しい忘れたくない声が聞こえる。
___「君は優しいね」
___「また、必ず大きくなったら会いに行くからね」

「…ぁ」
その瞬間に私の記憶は走馬灯のように呼び戻されていく。なんで、なんで忘れてしまったんだろう。

「っは、る゙…」
悲しくて、苦しくて熱い涙が溢れてくる。

「…冷」
「私、暖のところに行ってくる…今行かないとだめな気がするから」

私はそう言ってまだ朝だというのに目を腫らしながら校舎を走る。周りの生徒が私を異様な目で見ているのが分かる。

でもそんなこと気にしてはいられなくて、一刻も暖に会いたかった。

教室のドアを勢いよく開け、暖の席に目を向けるとそこはからっぽで暖はいなかった。
「なん…っで」

チカが私のことを心配そうに見つめて駆け寄ってくる。
「冷?どうしたの何かあった?」
「暖が…いないの」
私の今にも涙が溢れそうな表情を見て察したのか「落ち着いて、暖くんならさっきまでいたよ?」と伝えてくれる。

「先生のことなら私に任せて」と優しい声色で私に言う。

「…っごめん、ありがとう」
と言って私はすぐに校舎の外にでて暖を探した。

「は、る…!はる!!」
私は人生の中で一番というほどに声をはりあげている。そんな時もう一人の声が私と重なった。

「っ?!桐生くん、なんでここに」
「探してんだろ」

言い方はぶっきらぼうなはずなのに、その時の桐生くんはなぜかすごく優しさを感じた。

「ありがとう、桐生くん」