「じゃあ、そろそろ出よっか」
「うん。そうだね」

会話に夢中になっていたせいか思っていたよりも時間が経っていた私たちはやっと昼食を食べ終えた。

カフェを出てからもさっきの余韻がまだ残っているせいか心臓がトクトクと鳴っているのが分かる。

平常心を保たなければ。そう思っていると暖が私の顔を覗き込んできた。

「冷、あそこクラゲエリアだって。行ってみる?」
「へ…?!あ、うん!行ってみたい!」

とんでもなくまぬけな声をだしてしまった気がする。
平常心を保とうと思った矢先にこれだ。

私は暖の一挙一動だけでいつもドキドキさせられて、こんなに意識しているのは私だけだ。自分の男子耐性のなさに嫌気がさす。

心が沈んでしまうがそんな気持ちは次の瞬間に、一瞬にして吹き飛ばされてしまった。

「っ!すごい…綺麗」
いつの間にか私はクラゲエリアについていて、そこは今日の中でも一番感動的なものだった。

暗い空間の中にクラゲの水槽がいくつか置かれていて紫や青色にライトアップされている。

それはまるで、海に散りばめられた星のようだった。
そんな光景に浸っていると、暖が話し始めた。

「…冷はクラゲの最期がどんなか知ってる?」

「死んじゃう時ってこと?知らないかも…」

「___溶けて消えてなくなるんだって。誰にも気付かれないで迷惑もかけずに終わる、なんか最後まで綺麗だよね」

そういう暖の表情は笑っているはずなのに今にもいなくなってしまいそうなほどに儚くて、切なかった。

「そう、かな…私は気付きたいな。クラゲがいなくなっちゃってもちゃんと覚えてたいな」

思わずでた言葉に、なんだか熱く語りすぎてしまったのではと後から恥ずかしくなる。
所詮クラゲなのに、とか思われないだろうか。