「…冷は、透和とどんな話をしたの?」
急な暖の質問に返す言葉が見つからない。
あの時、桐生くんにこの事は暖には言うなと釘を刺されているのだ。

「お、落とし物を拾ってくれて私に届けてくれたの。
それでたまたま…」

我ながらものすごく嘘が下手なことに気付く。

「落とし物…?透和がそんなことしたんだ」
少し暖が不可解そうな顔をしているのが分かる。

「そうそう!桐生くん優しいよね、最初は見た事ない顔だったから驚いたんだ」

私はこの話を押し通すためになんとか話を繋げる。

「……」
「ど、どうしたの?暖」
もしかして私が嘘をついているのがバレてしまったのか。あたふたしていると暖が口を開いた。

「冷ってもしかして、透和のこと好きなの?」
「…っは、え?!」

暖の予想外の言葉に危うくサンドイッチを落としてしまうところだった。

「ち、違うよ!桐生くんのことそこまで知らないしそれになんでそうなるの?!」

こんなに慌てていたら逆に疑われてしまいそうだ。
好きな人に違う人を好きと疑われるなんてたまったものじゃない。

「透和は芯がしっかりあってかっこいいし女の子にもモテるんだよね。だから冷も好きなのかなって」

そうやってふんわりと笑いかけてくれる暖も十分モテているしかっこいいと思う。

そんなことを口走りそうになるが「確かにかっこいいとは思うけど好きとかじゃないよ」と返した。


「そっか…それならよかった」

そう言う暖の表情についドキッとしてしまう。
まるで私が好きじゃなくて良かったと、安心したような顔をやめてほしい。

勘違いしてしまいそうだ。