ある程度水族館を周り終わった頃「そろそろお昼にする?」と暖に尋ねられた。

「そうだね。なんか美味しそうなとこあるかな」
「んー、あそことかどう?」

暖が指を指した先は水族館の水槽を見ながら食べられるというおしゃれなカフェだった。

「いいね、そこにしよう」

店にはいるとそこはすごく幻想的で、水族館ならではの思い出が作れそうな場所だった。

暖と私はここのおすすめだというサンドイッチを頼むことにした。

「…!ここのサンドイッチ美味しい」
「ほんとだ、また行きたくなるね」

美味しさに感動してつい口を開けて頬張ってしまう。

暖が私をニコニコと見ているものだから無性に恥ずかしくなる。私は気を紛らせたくて何か話題がないかと頭を回転させる。

「あっ、あのさ暖」
「ん?どうしたの」
「桐生くんと仲良いの?この前暖と話してるところたまたま見えちゃって」

暖は目を見開いて驚いたような表情をした。
「冷、透和のこと知ってるの?」

透和という名前に一瞬固まってしまうがそういえば
桐生くんの下の名前だということをすぐに思い出す。

「あ…えと、暖が休んでた時にたまたま成り行きで話して…?」
教室でサボってたら会いましたなんてことは言えず、たどたどしくなってしまう。

暖は一瞬怪訝そうな顔をしたが「そうなんだ」と納得してくれたようだ。

「透和は僕が転校してくる前に仲良くなったんだ。
男友達って今まであんまりできたことなかったんだけど透和はなんかなれたんだよね」

そうやって話す暖の口ぶりは優しくて何かを懐かしんでいるようで、口元には笑みを浮かべていた。