眠い…。結局一日中浅い眠りのなかで朝を迎えた。

でもそんなことを言っている場合ではない。
私はすぐに服やメイクにとりかかることにした。

わざわざチカに手伝ってもらったのだ。無駄にする訳にはいかない。

そう思い私は「よし!」と一人で呟き準備を始めた。

「じゃあお父さん、行ってくるね」
「いってらっしゃい。気をつけてな」

冷にしては随分おめかしを…と小さな声が聞こえたような気がしたが知らないフリをして私は家をでた。

家をでるとちょうど暖がこちらへ歩いてきていた。

「冷おはよ、待ってなかった?」
「大丈夫、今家でたとこだったよ」

私は平常心を装いながらも暖と会話をするが自分の心臓がうるさいのが分かる。

暖の私服はゆったりとした青色のニットカーディガンと白色のカーゴパンツでラフにまとめていた。

ふわふわとした雰囲気はとても暖に似合っていて、本人には言えないけれどすごくかっこいい。

「今日いつもと雰囲気違うね。かわいい」

「…そうかな。嬉しい、ありがとう」

素直な笑顔を向けてそう言ってくれる彼を見るとお世辞ではないということが分かる。

そう思うと嬉しくて、さっきよりも胸の高鳴りを抑えられなくなりそうだ。
私が言えないようなことをさらりと言えてしまう彼はすごい。

私も、暖にこんなふうに伝えられたらいいのに。
暖は喜んでくれるかな。

「あ、あの…」
「ん?」
「暖も…かっこいいよ。私服似合ってて」

自分の言った言葉が恥ずかしすぎて体温が上昇する。なんでこんなことを暖は何の気なしに言えているんだろうか。