「私ね、昔は地味で冴えない子だったの。そんな私が湊の近くにいていいのかなって」

そう言って話し始めるチカの表情は、思い出を懐かしむようだった。

「ある日ね、なんであんな子が湊と一緒にいるの?って声が聞こえちゃったの」

そうやって笑いながら話すチカの顔は切なそうで、私まで心がキュッと締め付けられた。

もし暖と一緒にいる時にそんな言葉が聞こえてきら、私はどうするのだろうか。

もう彼とは一緒にいない方がいいんだろうかと自信を失ってしまうだろう。

そんなふうに自分と重ね合わせているとチカが話を続けた。

「私そこで思ったんだ、自分を変えなきゃって。それにかわいいって思われたいじゃん?」

そう言う彼女は、素直に咲く花のように笑っていた。

「チカは…強いんだね」

「え?」

「私ならきっとそこで挫けちゃうよ。自分を変えようなんて思えない」

きっとそうだ。チカはそれを当たり前かのように実現させてやってのけてしまうけれどそんな簡単なことではないから。

「ふふっ…冷はほんと優しいなぁ。私何回冷に救われてるか分かんないよ」

微笑みながら話すチカはなんだかスッキリしたような表情をしていた。

私は誰かを救うなんてそんな大層なことはできないけれど。
それでも、私の言葉でチカの中の何かを変えられたのならそれでいいと思う。

「さっきのメイクの仕方教えてよ」と言う私にチカは口角をあげながら「任せてよ!」と返してくれた。