チカがすごく満足そうに目を輝かせている。

一体どうなったんだろうか…と自分の顔を見るのが少しばかり怖い。

けれどそんな私のことはお構いなしにチカは鏡を渡して「早く見て!」と言わんばかりの表情を浮かべている。

ちらりと薄目を開けて鏡の中の自分を見る。

「……っ!!」

思わず目を見開いた。
まるで自分ではないようで、いつもよりも大人っぽさと華やかさがあった。

「冷は綺麗めな顔だから無理にごちゃごちゃにしないでみたんだけどどうかな?」

「そうなんだ。私じゃないみたい…」

チカが言うには顔全体が分からなくなるくらいのメイクをした訳ではないらしい。

それなのにここまで変わるのか。
メイクの大事さというものを改めて実感する。

それに加えて、やっぱりチカはすごいなぁと今日何度目かの感嘆をもらす。
きっと自分でするメイクだけではここまで変わっていないと思う。

私にはどんな風にするのが似合うのか、とかチカが色々と考えてくれたからこそだ。

「…やっぱりすごいよ。チカはさっき自分を否定してたけど、これはチカの努力があったからだと思う」

「っ!」

私はさっきふと思っていたことを口にした。チカは急にこんなことを言い出した私に唖然としていた。

この言葉がどんな影響を与えるのか分からない。

私が言ったところでチカの心は動かされないかもしれない。そう思ってあの時言えなかったけれど、やっぱり伝えたいな。

「ありがとう、チカ」

「…ははっ、ほんと冷には敵わないんだから」
そう言っているチカは涙ぐんでいるように見えた。