次の日に王城から執事が訪ねて来て、簡単な謁見の仕方や既製品の正装を置いて行った。

 謁見するのはそれから二日後と決まり、思ったよりも謁見が早く驚いた。

「ケント殿こちらを読んでください」

 ついでに執事は手紙を渡された。

「ケントなんだそれは?」

「なんか第三王子からの手紙らしいです」

「第三王子ってこの前助けた人だよね?」

「でもなんでケントだけに手紙なんだろうな?」

「俺にもわからないよ」

 特に第三王子から手紙が届く理由もわからず思い当たる節もなかった。

「ちょっと開けてみるね」

 手紙の封を切るとそこには一枚の紙に文字が書かれていた。

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ケント殿

 先日は我々を助けていただき感謝しています。今回父に謁見するということを聞き、手紙を書きました。

 私はケント殿が騎士達を治したにも関わらず、助からない命を必死に助けようとしている姿に目を奪われました。

 私と年も変わらず、立派な姿にこの国の王族として誇りに思います。

 そんなケント殿と少しお話がしたいと思い手紙を書きました。

 謁見の前に時間を取ってもらってもよいでしょうか?

 よければ準備していますので当日お待ちしております。

第三王子 ガレインより

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「これは惚れられたな」

「そうだね」

 手紙を見て、マルクスとラルフは何かを感じ取っていた。

「はぁん? 第三王子は男だぞ?」

「だってマリリンも男だぞ?」

「あっ……」

 トライン街に前例となる人が居たのを忘れていた。その瞬間どこか背中がゾクゾクとした。

 俺の異世界スローライフはまた遠のいて行くのだろうか……。

「ケント頑張れよ」

 二人に励まされたが特に頑張るつもりもない。できればボスみたいなもふもふに囲まれたスローライフを送りたいものだ。





――二日後


 俺達は正装に身を包んで王城から来た馬車に乗っている。この国の正装はスーツと軍服に似たような服装になっていた。

 しばらく王都の中を眺めながら馬車に乗っていると王城の門が見えてきた。王都周りにも石壁があったが王城の周りにもあり、大きな門が建っていた。

 一度門前に止まると執事から声がかけられた。

「本日は早めに来て頂きありがとうございます」

「いえいえ、一時間ぐらい早いだけなので大丈夫ですよ」

 口では大丈夫と言っているがこの間のマルクス達の話を聞き少しビクついていた。ちゃんと断らないと……。

 王族の告白を断るなんて最悪殺される可能性もあるからな。

「すみませんが身分を証明して頂いてもよろしいでしょうか?」

 王城に入る前にも門番が立っており、そこでもステータスを開示させ身分を証明する必要があった。

 どこかその姿を見ているとロニー達に会いたくなってきた。

「広いですね……」

「ここが貴族街になります。基本は貴族しか通れない仕組みになっています。招待された方はこのように何か家紋が入った物を身につけないと通れないんです」

 今乗っている場所には王族の家紋が入っている。

 平民は貴族街に入れるように出世するのが、王都でも一般的な夢なぐらい貴族街は入れない。

 そんな所を俺達は王都に来て三日目で入ることになった。

 うん、正直告白を断ることを考えると胃が痛くなってきた。

「そろそろ着きますので準備をお願いします」

 声をかけられるとすぐに馬車が止まった。馬車を降りると目の前には冒険者ギルドよりも大きな城が建っていた。

 あまりの大きさに俺達は開いた口が塞がらなかった。

「こちらへどうぞ」

 執事に案内されるまま城の中へ入っていくとそこにはたくさんの人が忙しなく歩いていた。

 どこか東京で働くサラリーマンに見えた。

「思ったよりたくさん人がいるんですね」

「貴族は領地の経営以外はここで働いています。他にも騎士団や魔法師団も拠点は王城になります」

 あまりの人の多さに首輪を盗取できる人が多く犯人がみつからないのではないかと感じた。

 もっと城に入れる人は限られているのだと思っていたのだ。

「ではこちらにマルクス殿とラルフ殿はお待ちください」

 執事は扉を開けるとそこには大きなソファーやテーブルなどが用意された待合室だった。

 そこにマルクスとラルフは待機し、やはり俺だけは第三王子が待っているという部屋に案内された。

――トントン!

「冒険者ケント殿をお連れしました」

「ああ、通してくれ」

 執事が扉を開けると俺に中へ入るように勧めてきた。

 いよいよ、覚悟を決める時だ。

「ケント殿このたび――」

「ごめんなさい! ガレイン様のお気持ちにはお答えできません」

 俺は華麗に飛び上がると手足をコンパクトに折りたたんだ。

 事前に昨日からベットの上で何度も練習したジャンピング土下座だ。

 チラッとガレインの顔を見るとなぜか彼は固まっていた。