あまり寝付けなかった俺達は早めに起きて一階の椅子に座っている。あまりの騒音にラルフなんて耳に薬草を詰めて寝ていたからな。

 二人してウトウトしているところに昨日受付していた女性が声をかけてきた。

「あんな大人になってはダメよ? 冒険者は体力があるからって女性の無茶させちゃ嫌われちゃうからね?」

「勉強になりました。もうマルクスさんといる時は防音部屋に泊まるか遊びに行ってもらうことにします」

「それが正解ね」

 しばらくすると顔面がツヤツヤでスッキリとした顔のマルクスが降りて来た。ちなみに気づいた時にはラルフはテーブルに伏せて寝ていた。

「ああ、おはよう!」

 声がするとラルフはマルクスを睨んでいた。ラルフには相当辛かったのだろう。

「ちょっと来て!」

「えっ? どうしたんですか?」

 憩いの宿屋の女性はマルクスを連れて裏庭に向かった。

 憩いの宿屋は夫婦で経営しており、恰幅の良い女性がホーラン、夫がマッシュという名だ。二人にも子供は居たが今は別の街に住んでいる。





 少しするとマルクスは恥ずかしそうに戻ってきた。

「ケント、ラルフすまんな! つい久しぶりで俺の息子も元気で――」
 

――バチーン!


 マルクスが下ネタを言った瞬間にホーランに後頭部を叩かれていた。

「ほんと冒険者は脳筋ね! ケントとラルフは良い男になるのよ?」

「おいおい、俺も良い男だと--」

「女性をあんな状態にして何がいい男なのか……」

 カレンは朝方マルクスに付き合えきれなかったのか、服を持って出てきたところを目撃してお湯を渡し着替えさせたらしい。

 その時にカレンは"バイオレンスベアーよりバイオレンスだった"と言っていた。

 災害級の魔物より凶悪ってどこの部分がなのか行為なのかは流石に聞けなかった。

 どこかマルクスが可哀想に見えたため話を変えた。

「今日冒険者ギルドに行くんですよね?」

「ああ」

「王都のギルドはどんな感じなんですか?」

「とにかく広くて人が多いぞ。トライン街の倍以上は確実にいるぞ」

「えっ!?」

 トライン街でも規模は大きい方だが、それよりも大きいっていうことは余程広く人が多いのであろう。

 国の中央に王都があるため村からの依頼や街などで処理できない依頼は王都に回されることが多い。

 そのため依頼に危険も多いが、ランクに合わせて様々な依頼が用意されている。

「早く行こうよ」

 さっきまでマルクスを睨んでいたラルフは元気のようだ。彼も脳筋の要素を持っているのかもしれない。

 俺は眠たい目を擦ってついていった。