涙が止まらない俺に突然綺麗な服装をした少年が声を掛けてきた。

「この度はありがとうございました!」

「……?」

 周りの騎士が頭を下げたことで彼がこの騎士達が守りたかった人だとすぐに理解できた。

「あなたが居たからこそこれだけの人が無事に戻ることが出来そうです。この国の第三王子として感謝します」

 涙が止まらない俺に対してお礼を言ってくる段階で空気が読めないのだろう。

 少年が俺に頭を下げるとその場にいた者達が焦り出していた。

「いやいや、大丈夫です。俺……僕にも助けられなかった人がいるので」

 執事の男性は助けられなかった。それでも殿下は頭に何回も頭を下げていた。

「良ければ名前を伺ってもいいですか?」

 殿下は俺に名前を訪ねてきた。他の人達にも名前を聞いていたから後日冒険者ギルドを通じて助けてもらったお礼として報酬を出すらしい。

「では私達は王都へ戻りましょうか」

 騎士が殿下に声をかけ馬車に戻ると、すぐに他の執事が御者を変わりをして出発した。

 御者をしていた執事の遺体は他の騎士達が運んでいた。

「ケント落ち着いたか?」

「はい、ご迷惑おかけしました」

「いえ、気にするな。俺達は家族だろ」

「そうだ!」

 マルクスとラルフは普段と特に変わりなかった。

「すまんが今回の首輪も俺が預かっておいていいか? あとで王都の冒険者ギルドに報告しておく」

「わかりました」

 異次元医療鞄から首輪を取り出すとマルクスに渡した。

「やっぱお前絶対うちのパーティーに来いよ! あんなに強いとは思わなかったぞ」

 リモン達は特に慰めるわけでもなく、単純に俺の働きに驚いていた。そして毎度の如くパーティーに勧誘してきた。

「皆さんがご無事で何よりです。そろそろ日も暮れますし早く王都に向かいましょうか」

 空は少し日が暮れ夕方になろうとしていた。御者の掛け声とともに俺達は王都に向かって再出発した。

 今日は俺が異世界に来て初めて人を助けることができなかった日になった。