オラはトライン街の貧困地区に住むラルフだ。今日大好きな家族と過ごした家に別れを告げた。
家族は母と父と妹の四人家族で貧乏ながらも幸せだった。
母と父が違う街から移り住んで来たため、閉鎖的なこの街では働くのも大変と言っていた。だから貧困地区に住むしかなかった。
それでもオラは毎日幸せだった。
オラのスキルは不遇スキルもしくは外れスキルと言われているものだったけど、毎日笑いが絶えないこの家族が大好きだった。
幸せは長いこと続かないのだ……。
――数年前
今日は毎週恒例の炊き出しに来ていた。領主様が週に一回やってくれる炊き出しは貧困地区にとっては大事な食事だ。
「はあー、いい匂いだ」
「はは、ラル兄だらしないよー」
オラは匂いに釣られてよだれを垂らしていたようだ。貧困地区の広場から広がる匂いが遠いとこにいても獣人であればすぐにわかる。
「俺らは人間より嗅覚がいいからよだれぐらい出るだろ!」
父を見るとオラと同様によだれが溢れて出ていた。
「もう、あなたは昔から食い意地ばっかり!」
「あれは俺達じゃなくて飯がうまそうなのが悪い。なあ?」
「そうだな」
――カンカン
そんな会話をしていると広場の中央から炊き出しの合図である鍋を叩く音が聞こえた。ここでは名前と住所を伝えることで食事と交換してくれるのだ。
「はぁー、うめー」
「ラルフうまいか?」
「うん!」
「あっ、ラル兄お肉残してる」
「あー、俺が最後まで残していた肉がー」
最後まで残していた肉を妹のルウに取られた。せっかく最後に食べようと思ったのに……。
「ふふ、私のお肉をあげるわ」
「母さんありがとう」
そんな家族団欒の食事は長くは続かなかった。
その日の夜に扉を叩く音がしたため、母が扉を開けるとそこには綺麗な服を着た男性が数人立っていた。
「夜分遅くにすみません」
「どうされましたか?」
「今日の炊き出しですごく美味しそうに食べる家族がいると聞いて、良かったら一緒に食事をしないかと領主様からのお話があって伺いました」
「えっ!?」
「お、どうした?」
「あなたが旦那さんですか? 実は――」
綺麗な服を着た男性が父にも説明していた。どうやら領主様が気まぐれにオラ達家族と食事をしたいらしい。
「しかし領主様の前に出るのにこんな服じゃ流石に……」
貧困地区に住んでいるため服もボロボロな物を着ていた。オラの服も穴が開いている。
とても領主と食事をする格好ではなかった。
「そこに関しては特に問題ありません。全て領主様が用意しています。着いたらお風呂に入って体を清めてから、綺麗な服に着替えて貰います」
「本当にそんなことがあるのかしら?」
母はどこか怪しんでいたが、美味しいものが食べれるならオラは行きたい。
「その後食事を摂って頂きそのままご自宅にお送りします。服に関しても領主様に付き合って頂けた時間としてプレゼントすることになっています。」
聞いた話ではすごくメリットしかなかった。優しい領主として有名なため、美味しい食事と服が貰えるならと家族四人で貴族地区に向かうことにした。
家族は母と父と妹の四人家族で貧乏ながらも幸せだった。
母と父が違う街から移り住んで来たため、閉鎖的なこの街では働くのも大変と言っていた。だから貧困地区に住むしかなかった。
それでもオラは毎日幸せだった。
オラのスキルは不遇スキルもしくは外れスキルと言われているものだったけど、毎日笑いが絶えないこの家族が大好きだった。
幸せは長いこと続かないのだ……。
――数年前
今日は毎週恒例の炊き出しに来ていた。領主様が週に一回やってくれる炊き出しは貧困地区にとっては大事な食事だ。
「はあー、いい匂いだ」
「はは、ラル兄だらしないよー」
オラは匂いに釣られてよだれを垂らしていたようだ。貧困地区の広場から広がる匂いが遠いとこにいても獣人であればすぐにわかる。
「俺らは人間より嗅覚がいいからよだれぐらい出るだろ!」
父を見るとオラと同様によだれが溢れて出ていた。
「もう、あなたは昔から食い意地ばっかり!」
「あれは俺達じゃなくて飯がうまそうなのが悪い。なあ?」
「そうだな」
――カンカン
そんな会話をしていると広場の中央から炊き出しの合図である鍋を叩く音が聞こえた。ここでは名前と住所を伝えることで食事と交換してくれるのだ。
「はぁー、うめー」
「ラルフうまいか?」
「うん!」
「あっ、ラル兄お肉残してる」
「あー、俺が最後まで残していた肉がー」
最後まで残していた肉を妹のルウに取られた。せっかく最後に食べようと思ったのに……。
「ふふ、私のお肉をあげるわ」
「母さんありがとう」
そんな家族団欒の食事は長くは続かなかった。
その日の夜に扉を叩く音がしたため、母が扉を開けるとそこには綺麗な服を着た男性が数人立っていた。
「夜分遅くにすみません」
「どうされましたか?」
「今日の炊き出しですごく美味しそうに食べる家族がいると聞いて、良かったら一緒に食事をしないかと領主様からのお話があって伺いました」
「えっ!?」
「お、どうした?」
「あなたが旦那さんですか? 実は――」
綺麗な服を着た男性が父にも説明していた。どうやら領主様が気まぐれにオラ達家族と食事をしたいらしい。
「しかし領主様の前に出るのにこんな服じゃ流石に……」
貧困地区に住んでいるため服もボロボロな物を着ていた。オラの服も穴が開いている。
とても領主と食事をする格好ではなかった。
「そこに関しては特に問題ありません。全て領主様が用意しています。着いたらお風呂に入って体を清めてから、綺麗な服に着替えて貰います」
「本当にそんなことがあるのかしら?」
母はどこか怪しんでいたが、美味しいものが食べれるならオラは行きたい。
「その後食事を摂って頂きそのままご自宅にお送りします。服に関しても領主様に付き合って頂けた時間としてプレゼントすることになっています。」
聞いた話ではすごくメリットしかなかった。優しい領主として有名なため、美味しい食事と服が貰えるならと家族四人で貴族地区に向かうことにした。