昨日は試しにお風呂に支援の心を使った『水治療法』を発動させると、夜はぐっすり寝ることができ、朝の目覚めがよく起きることができた。

　今日は昨日の依頼を延期させたため、その依頼と治療院の話のために冒険者ギルドを訪れた。

「おはようございます」

「あっ、旦那様」

　今日もパツパツな服を着たやつが俺を見ている。

「やばっ！？」

　俺は素早くプラナスの元へ走って逃げた。

「あれ？　旦那様？」

　支援の心が発動されていたのかいつもより早く移動ができた。　

「プラナスさんおはようございます」

「おはようございます。すぐに依頼の準備をしますね」

　プラナスに小声で話すと別室に案内された。

　部屋は広くベットだけがポツンと置いてあった。

「ここは元々私達ギルド職員の仮眠室だったところよ」

　案内されたところギルドの仮眠室だ。部屋の広さは10畳程度だが、治療院というよりは保健室に感覚的に近い。

「ここのベッドと待ち合い椅子の他に何か準備はいるかしら？」

「ギルド内にプールかお風呂ってあったりしますか？」

　ケントはスキルツリー"Lv.3 水治療法"の使い所を探していた。

「プールは何かわからないがお風呂なんて高級なものはないわ。水もそんなに使えないからね」

　自身のスキルの影響もあり、お風呂が貴族のような裕福な家庭にしかないと忘れていた。

　プラナスに"水治療法"を話したが、今すぐ治療院のために作ることは出来なかった。

　そこでふとあるものを思い出した。

「ちょうどよい足が入りそうな容器……入れ物はありますか？」

　思いましたのは足湯だ。足湯なら全身を温めなくても、体をリラックスさせ、血液の循環をよくするために使えないかと考えた。

「樽とか壺ならサイズも色々あるから待っててね」

　しばらくすると樽を転がしてきた。

「依頼品を保存するのに使っているけど、どのサイズがいいかしら？」

　その中にちょうど深さが50cmにも満たないのがあった。

「これを三つぐらい用意してもらうことできますか？」

「ええ、それでこれは何に使うのかしら？」

　入れ物と俺を交互に見ていたため、プラナスを椅子に座らせた。

「靴を脱いで足を樽の中に入れてもらってもいいですか？」

　いつも通りに"水治療法"を発動させ、簡単に足湯を作った。

　プラナスは靴を脱ぎ入れ物に足を入れると瞬く間に体の力が抜けた。

「あーこれいいですね。疲れが取れてきます」

　初めての足湯を気に入り浸かり続けている。


――トントン！


「昨日は大丈夫だったか？」

　扉を開けたのは解体屋のべナットだ。べナットはマッサージが楽しみで仕事を早く終わらせ、休憩にしにきた。

「あれ？　もう仕事は終わったんですか？」

「お前昼になったぞ？」

「えっ！？　早く戻らなきゃ」

　いつ間にかプラナスはお昼まで足湯をしていた。

　急いで靴を履いたプラナスは体の異変を感じた。

「あれ？　マッサージもしてないのに体が動きやすいわ」

　なんとなく考えた足湯でもお風呂と同様に効果が得られるらしい。

「わしもそれに入っても良いか？」

「あっ、お湯を変えるので待ってくださいね」

　お風呂の文化がないこの世界では体が汚い可能性があった。そのため衛生面を考慮し、お湯を毎回変えることにした。

「ケントは水属性魔法も使えれるんか？　しかも火属性と混成魔法とは将来有望だな」

　お湯を出すには基本的に水属性魔法で水を出しながら、火属性魔法で温める必要があった。

　べナットがお湯に足を入れるとプラナスと同様な反応だ。それだけ日々の仕事にストレスを感じているのだろう。

　その後、足湯を終えて満足したべナットは夕方に来ると言って仕事に戻った。

　その日の夕方から足湯を聞きつけたのか、ギルド職員が準備中の治療室の前に集まるという転生前に馴染みの光景ができていた。