ラルフはお風呂に入るようになってから、少しずつ依頼が受けやすくなった。

 この世界にも石鹸に似た植物が存在するため、貧困地区と自身で言わなければ見た目はわからないほどだ。

 今日はラルフと共に治療院の依頼を受けることにした。

 治療院の依頼自体が滅多にないそうだが、たまたま新しく出来た治療院に新しい見習いが間に合わなかったらしい。

「こんにちは! 冒険者ギルドから来ました」

「ああ、君達か。そっちの子も話は聞いているよ」

 事前にプラナスが俺のスキルとラルフの話を通していた。スターチスがスキルを治療院でも使えないかと手紙で送ってたらしい。

 ここの店の中もエッセン町の治療院と似た構造で出来ており、壁の周りに液体が入った瓶が並べられていた。

「僕はアスクレと申します。スキル【薬師】なので薬に回復魔法を掛けてやっています」

「僕はスキル【理学療法】です」

「オラは……僕はスキル【放射線技師】です」

「二人とも変わったスキル持ちなんだね」

 アスクレは俺達のスキルを外れスキルや不遇スキルとは言わなかった。それだけアスクレは人間が出来ているのであろう。

「簡単に仕事内容を伝えるね」

【治療院仕事内容】
1.受付スタッフ
症状や状態をその場で問診し、待合室へ誘導。お金の管理なども含めて行う。

2.薬の管理と診療室へ誘導
アスクレに呼ばれたら診療室まで誘導。他、アスクレに薬を渡し、受付スタッフに金額を教える。

「んー、僕としては対応がうまくできる方と記憶力が良い方で分ければ良いと思うけどどうかな?」

 治療院の依頼をあまり知らない初対面の俺達にも意見を求めた。

 仕事の内容も大体はエッセン町の依頼と似ている。

「僕は他の町で治療院の依頼を受けたことがあるので受付スタッフのほうは出来ます。あとは記憶力に関してはラルフの方が良いので、ラルフのみに説明すれば手間が省けると思います」

 俺は受付スタッフ、ラルフを薬の管理と診療室の誘導へと仕事を割り振った。

 ラルフは犯罪歴があることを考慮すると無難な割り振りだろう。

「それでいきましょうか」

 ラルフが覚え次第治療院を開店する方向性となった。





 俺が紙やお金の準備をしていると、一時間もしないうちにアスクレとラルフは戻ってきた。

「ラルフくんは覚えが良いね。何で冒険者ギルドに所属しているのか不思議なくらいだよ」

 ラルフはスキルを使用することで、本質を見抜くことができるようになった。

 その結果なのか説明を聞いたものと薬を照らし合わせるだけで、あとはスキルボードが保存しているため記憶する必要性はない。

 レントゲンや画像をスキルの中に保存できるのだろう。

「今から開店するけど準備は大丈夫ですか?」

「大丈夫です! よろしくお願いします」
 開店してからは少しずつ患者は増えてきた。

「少しここが痛くて薬を貰いに来たわ」

「膝が痛いんですね。内側ですか?」

「ここは膝と言うんのか」

 治療院に来る人は体の部位の名前がわからない人が多い。そのためジェスチャーや指差しで詳細を聞いている。

「でも何も言わなくても分かるのね。流石未来ある先生だわ」

 エッセン町と違って規模が大きいからなのか風邪のような症状のみではなく、整形疾患のような患者も来ていた。

 その中でも膝や腰の痛みを訴える人が多く、中世ヨーロッパみたいな世界なのに異世界の影響か膝が内反変形している老人が多い。
 
 その日は何事も問題なく営業を終えることが出来た。

「二人とも助かったよ。思ったより人も多かったけどどうにかなったよ! 回復スキル持ちのスタッフが来るまで依頼を延長しても良いかな?」

「僕は大丈夫です。ラルフはどう?」

「僕も大丈夫です」
 
「じゃあ、お願いしようかな。とりあえず依頼達成報告書と依頼書を渡すよ」

 一枚ずつ受け取った依頼達成報告書と依頼書を受け取り冒険者ギルドに戻った。