今日も門で仕事をしている。いつも帰ってくる時間にジョニーが帰ってこないのが少し心配だが、そろそろ立派な冒険者になる息子にも今やらなければいけないことがあるのだろう。
「そこの者止ま……領主様!」
「ああ、ご苦労。森で魔物に襲われていた子供がいたから連れてきたよ。おい!」
俺はどこか嫌な予感がした。あいつじゃなければいいって内心思ったが、その予感は的中した。
領主は指示をすると見たことある顔の少年を抱きかかえていた。
「ジョ……ジョニー……。おい、起きろよ! おい!」
俺はジョニーを受け取ると顔を何度叩いても反応せず体は冷え切っている。
「くそ!」
「我が駆けつけた時にはもう手遅れだった。 すまない。そのかわりにこいつを狩ってきた」
領主はキラーマンティスの頭を投げつけた。
「キラーマンティスですか」
「その者は残念だ。私がはやく駆けつけていれば――」
領主も自分の領土の子どもを守れず辛そうな表情をしている。
「いや、領主様のせいではありません」
「そのように言ってもらえて感謝する」
領主は馬に跨り自身が住む屋敷に帰っていった。
その口元は笑いを堪えるのに必死に耐え口角が上がっているのを俺は知らない。
♢
俺はジョニーを抱きかかえて家に帰った。
――ガチャ!
「あなたおかえ……ジョニー!」
俺の腕の中で眠るジョニーに気づきアニーは勢いよく近づいてきた。テーブルにあった水が入ったコップが倒れても気にしないほどアニーは焦っていたのだろう。
「ジョニーやっと帰ってきたぞ。ジョニー……」
俺はジョニーに声をかけてもやはり返事はない。
「あなたどういうことよ! ジョニーは……ジョニーは……」
「さっき領主様が抱えてきてくれた。森でキラーマンティスに襲われていたところを助けたが間に合わなかったって……クソ!」
「ジョニー」
アニーはジョニーの頬に触れ優しく語りかけた。
「クソクソクソ! あんな元気に朝は行ったのに」
息子の名前を叫んでも叫んでもジョニーからの返事はなかった。聞こえてくるのは俺の叫び声とアニーの鼻をすする音だけ。
「ジョニーおかえり。ちゃんと帰ってきてくれたんだね。お母さんあなたの好きなご飯を今から作るわね」
アニーはジョニーの手に触れると握っていた手から何かがが落ちていた。
「リーフ草……」
手の平からは十枚のリーフ草がひらひらと舞い散った。
「お前……そんな姿になってまで冒険者になりたかったんか」
「さすが私達の子だわ」
きっとジョニーはキラーマンティスに追いかけられている時も必死にリーフ草を掴んでいたのだろう。
リーフ草は中々見つからないからな。それだけ冒険者になるという目標が強かったのだろう。
「さぁ、最後にみんなで美味しいご飯を食べましょう」
アニーは手を叩くと調理場に向かった。その後ろ姿はどこか震えていた。彼女なりに母親としての最後の仕事なんだろう。
もう家族三人で夕食を囲むことも家族団欒で話すことも無くなってしまった。
「そこの者止ま……領主様!」
「ああ、ご苦労。森で魔物に襲われていた子供がいたから連れてきたよ。おい!」
俺はどこか嫌な予感がした。あいつじゃなければいいって内心思ったが、その予感は的中した。
領主は指示をすると見たことある顔の少年を抱きかかえていた。
「ジョ……ジョニー……。おい、起きろよ! おい!」
俺はジョニーを受け取ると顔を何度叩いても反応せず体は冷え切っている。
「くそ!」
「我が駆けつけた時にはもう手遅れだった。 すまない。そのかわりにこいつを狩ってきた」
領主はキラーマンティスの頭を投げつけた。
「キラーマンティスですか」
「その者は残念だ。私がはやく駆けつけていれば――」
領主も自分の領土の子どもを守れず辛そうな表情をしている。
「いや、領主様のせいではありません」
「そのように言ってもらえて感謝する」
領主は馬に跨り自身が住む屋敷に帰っていった。
その口元は笑いを堪えるのに必死に耐え口角が上がっているのを俺は知らない。
♢
俺はジョニーを抱きかかえて家に帰った。
――ガチャ!
「あなたおかえ……ジョニー!」
俺の腕の中で眠るジョニーに気づきアニーは勢いよく近づいてきた。テーブルにあった水が入ったコップが倒れても気にしないほどアニーは焦っていたのだろう。
「ジョニーやっと帰ってきたぞ。ジョニー……」
俺はジョニーに声をかけてもやはり返事はない。
「あなたどういうことよ! ジョニーは……ジョニーは……」
「さっき領主様が抱えてきてくれた。森でキラーマンティスに襲われていたところを助けたが間に合わなかったって……クソ!」
「ジョニー」
アニーはジョニーの頬に触れ優しく語りかけた。
「クソクソクソ! あんな元気に朝は行ったのに」
息子の名前を叫んでも叫んでもジョニーからの返事はなかった。聞こえてくるのは俺の叫び声とアニーの鼻をすする音だけ。
「ジョニーおかえり。ちゃんと帰ってきてくれたんだね。お母さんあなたの好きなご飯を今から作るわね」
アニーはジョニーの手に触れると握っていた手から何かがが落ちていた。
「リーフ草……」
手の平からは十枚のリーフ草がひらひらと舞い散った。
「お前……そんな姿になってまで冒険者になりたかったんか」
「さすが私達の子だわ」
きっとジョニーはキラーマンティスに追いかけられている時も必死にリーフ草を掴んでいたのだろう。
リーフ草は中々見つからないからな。それだけ冒険者になるという目標が強かったのだろう。
「さぁ、最後にみんなで美味しいご飯を食べましょう」
アニーは手を叩くと調理場に向かった。その後ろ姿はどこか震えていた。彼女なりに母親としての最後の仕事なんだろう。
もう家族三人で夕食を囲むことも家族団欒で話すことも無くなってしまった。