俺はそれまでの空き時間に薬草の本を広げて、胸元にいるコロポに話しかけた。
「これはマナ草じゃな!」
「マナ草?」
「前いた川の中とかに生い茂っていたぞ」
「へー、そうなんだ」
絵だけはわからないところをコロポが適宜教えてくれたため意外にも勉強が捗っていた。
ある冒険者が俺に声をかけてきていた。
その人は鎧にハンマーと盾を背負っておりいかにも前衛職の装備だった。見た目からして強そうな男だ。
「おい、坊主!」
「はい!?」
急に声をかけられたため俺はその場でビクッとしてしまった。コロポは姿を消す魔法を使っているため、向こうからは一人でぶつくさと話しながら勉強しているやつに見えたのだろう。
「お前そんなの見てても勉強になんねーだろ?」
「んー、絵は載ってるから大丈夫――」
俺は長いこと森に住んでいたコロポ大先生がいるから問題なかった。むしろ変に冒険者に絡まれる方が安全だ。
「そうか、俺が教えてやる!」
「えっ?」
俺と男の声は被っていた。この男は何が目的なんだろうか。
「別に……」
俺が断ろうとすると鎧の男は少し落ち込んだ表情をしていた。その姿がさっきまで一生懸命予約を取っていたギルドマスターに見えた。
「じゃあお言葉に甘えて――」
「よし、任せろ!」
鎧の男の変わりように俺は笑いが止まらなかった。しかも話している最中に遮ったのだ。このパターンは俺が断っても教えようとするお節介系の人なんだろう。
「それで、坊主に相談なんだが……」
「はい」
俺はやはりこのパターンなんだと思った。
「俺にもマッサージをしてくないか? ただ今金が無いから知識と引き換えに頼む」
そう言って男は俺に頼み込んできた。
「マルクスさん体調大丈夫なんですか?」
すると遠くで見ていたスターチスが声をかけてきた。
「ああ、スターチスか。いや、まだなんとも言えないな」
どこかマルクスの表情は暗かった。
「マルクスさんってここのギルドで唯一いるAランクなんだ。ここ数年間で体調崩してBランクになっちゃいましたけどね」
スターチスの紹介に鎧の男は下唇を噛み血が滲み出ていた。
それを見たスターチスはすぐにマルクスに謝っていた。悪気はないのだろうが言うタイミングというものがあるだろう。
「すみません。私が勝手に言ってしまって……」
「ああ、間違いではないから気にするな」
それでもマルクスの表情はどこか暗かった。
「それで小僧が良ければ俺にマッサージをしてもらえないか? 装備を売れば金になるがまだ冒険者を諦められなくてな。お願いだ!」
マルクスは俺に頭を下げると辺りからは『落ちぶれた』『ついに若いやつにも頭下げやがった』と冷たい声と視線が浴びせられていた。
立派な冒険者で大の大人がここまでして自分を頼って頭を下げている。
そんな姿を見て俺は自身の出来ることをやろうと心に決めた。
「僕が出来る限りで良ければやりましょう!」
これが俺にとって初めての異世界での師匠マルクスとの出会いだった。
「これはマナ草じゃな!」
「マナ草?」
「前いた川の中とかに生い茂っていたぞ」
「へー、そうなんだ」
絵だけはわからないところをコロポが適宜教えてくれたため意外にも勉強が捗っていた。
ある冒険者が俺に声をかけてきていた。
その人は鎧にハンマーと盾を背負っておりいかにも前衛職の装備だった。見た目からして強そうな男だ。
「おい、坊主!」
「はい!?」
急に声をかけられたため俺はその場でビクッとしてしまった。コロポは姿を消す魔法を使っているため、向こうからは一人でぶつくさと話しながら勉強しているやつに見えたのだろう。
「お前そんなの見てても勉強になんねーだろ?」
「んー、絵は載ってるから大丈夫――」
俺は長いこと森に住んでいたコロポ大先生がいるから問題なかった。むしろ変に冒険者に絡まれる方が安全だ。
「そうか、俺が教えてやる!」
「えっ?」
俺と男の声は被っていた。この男は何が目的なんだろうか。
「別に……」
俺が断ろうとすると鎧の男は少し落ち込んだ表情をしていた。その姿がさっきまで一生懸命予約を取っていたギルドマスターに見えた。
「じゃあお言葉に甘えて――」
「よし、任せろ!」
鎧の男の変わりように俺は笑いが止まらなかった。しかも話している最中に遮ったのだ。このパターンは俺が断っても教えようとするお節介系の人なんだろう。
「それで、坊主に相談なんだが……」
「はい」
俺はやはりこのパターンなんだと思った。
「俺にもマッサージをしてくないか? ただ今金が無いから知識と引き換えに頼む」
そう言って男は俺に頼み込んできた。
「マルクスさん体調大丈夫なんですか?」
すると遠くで見ていたスターチスが声をかけてきた。
「ああ、スターチスか。いや、まだなんとも言えないな」
どこかマルクスの表情は暗かった。
「マルクスさんってここのギルドで唯一いるAランクなんだ。ここ数年間で体調崩してBランクになっちゃいましたけどね」
スターチスの紹介に鎧の男は下唇を噛み血が滲み出ていた。
それを見たスターチスはすぐにマルクスに謝っていた。悪気はないのだろうが言うタイミングというものがあるだろう。
「すみません。私が勝手に言ってしまって……」
「ああ、間違いではないから気にするな」
それでもマルクスの表情はどこか暗かった。
「それで小僧が良ければ俺にマッサージをしてもらえないか? 装備を売れば金になるがまだ冒険者を諦められなくてな。お願いだ!」
マルクスは俺に頭を下げると辺りからは『落ちぶれた』『ついに若いやつにも頭下げやがった』と冷たい声と視線が浴びせられていた。
立派な冒険者で大の大人がここまでして自分を頼って頭を下げている。
そんな姿を見て俺は自身の出来ることをやろうと心に決めた。
「僕が出来る限りで良ければやりましょう!」
これが俺にとって初めての異世界での師匠マルクスとの出会いだった。