それから、僕は親の目を盗んで、夜中にこっそり妖精探しをするようになった。
 捜索の時間に夜を選んだのには理由がある。
 
 答えは簡単で、妖精は光るからだ。

 それは僕が妖精の外見について知っていた唯一の情報なのだが、なにも僕だけが知っている秘密というわけではない。

 地元の人間なら誰でも知っていることだし、地元の人間でなくても夜に「妖精の森」を一目でも見ればわかることだろう。
 
 「妖精の森」は夜になるとボウッと青白く光る。それは、森の中で蛍のように妖精が輝いているからだ。
 
 僕は虫網と虫籠(妖精の大きさはわからないが、何も持たないよりはマシだろう)を持って、夜な夜な近所を走り回った。

 明るい昼よりも夜の方が探しやすとはいえ、森を抜け出した妖精が、僕の家の近所にやって来る確率はどれほどのものなのか。
 そんな当たり前のことに気が回らないほどに、僕は幼かった。

 それどころか、取らぬ狸の皮算用よろしく、僕は地球儀片手に世界一周旅行の計画まで考えていた。

 自分がいかに平凡な人間か骨の髄まで知ってしまった今から振り返ると、なんだか笑ってしまうような話だが、それが若さ故の特権なのかもしれない。