「ふうーこんなもんか」
 俺はギャラリーの中を歩き回り、入念に最終チェックをした。
 大学2年生になった俺は、明日からの1週間、自分の『個展』を開く。
 俺は学校で絵の勉強しながら空いている時間はバイトに励み、念願だった個展を開くことができた。
 それはもちろん、彼女との約束だったから。
 そして俺はもちろん彼女との『約束の日』をしっかりと覚えていた。

 俺はチケットを封筒に入れた。
 「夜瀬楽空様っと、あっ!あと手紙手紙!」
 あらかじめ用意しておいた紙を広げた。
 「最終日にお越しください。時間は・・・」
 手紙にそう書いた。
 彼女も色々と予定はあると思うが、最終日に来てくれることを願う。
 「じゃあ明日から1週間よろしくお願いします!」
 「はーい、お願いします!」
 ギャラリーのスタッフに挨拶をし、俺はポストへと足を運んだ。


 俺の夢が叶う。
 いや、これからがスタートなのかもしれない。
 夢はいくつあってもいい。どんなに小さなことでも、すぐ叶いそうなことでも。時には難しいことであっても。
 彼女がそれを教えてくれた。
 早くこの色と音を彼女に届けたい。
 『約束の日』で君を待ってる。