俺は、帰っても収まりきれないほどの達成感に包まれていた。初めて夕焼けの空を描くことができたこと。大川先生が褒めてくれたこと。
そして浜坂先生とのあのわずかな会話で何だか心が明るくなった感じがした。
俺はその日の夜、彼女に連絡をした。
〈♪夜瀬さん!今日、夕焼けの空を描いたんだ!夜瀬さんに見て欲しいから11月1日の放課後時間あるかな?〉
「送信っと」
以前では連絡するのでさえ躊躇(ちゅうちょ)していた俺だが今は違う。見違えるほどに。
これも彼女との距離が縮まったおかげである。
〈♪ピロン〉
.....!
今日は返信が思っていたよりも早かった。
俺は急ぐ必要はこれっぽっちもないが、慌ててスマホを手に取る。
《♪本当?!凄いね白川くん!11月1日大丈夫だよ!またさ、15:30に第二音楽室で待ち合わせでどうかな?》
第二音楽室......。別にそこまでの用事じゃないからな。
〈♪別に見てもらいたいだけだから空いている教室で全然いいよ!〉
すると、すぐに返信がきた。
《♪わたしは白川くんにピアノを聞いて欲しいから第二音楽室がいいな!...いいかな?》
あ、そういうことか!
また夜瀬さんの音楽を聞くことができるなんて嬉しいな。
〈♪そういうことならもちろんいいよ!じゃあ楽しみにしてるね〉
《♪わたしも》
胸がいっぱいで張り裂けそうなくらいだった。
俺の世界が夜瀬さんをきっかけに広がっていく。
色づいていく。
絵を描く時だけは色は自由なんだ。
自分の色。
俺の絵は確かに変動した。