今日、吹奏楽や音楽についてより知ることができた。
もちろん、彼女の普段とは違う姿も知ることができた。
そして彼女のクラリネットから、彼女にしか表現することができない音の魅力を感じることができた。
音というのは一人ひとり違っていて、なんだかその人の性格が見えそうな気がした。
俺は出口へと向かう。
今からすべきことは一つ。
彼女とまっすぐ向き合って、もう一度彼女とたくさん話がしたい。
会場を出てもさっきの彼女のソロに限らず、音楽の余韻が俺の中に残っていた。
音楽というのは人の心を動かすとよく言うが、その意味が本当に分かった。
俺は海岸沿いの青いベンチへと向かった。
きっと彼女は急いで来るだろう。そう思い、途中で見かけた自動販売機で水を買った。
水が太陽の光に反射して輝いていた。
まあ今日の彼女の輝きには敵わないけど......。
音楽は、俺にそんなことを考える余裕さえも与えていた。
「お客さんのお見送り行く人は片付け後でいいから今行ってねー」
「はい!」
楽空が部員に指示を出す。
「じゃあ美凪、わたしたちも行こう!」
「うん!行こ......あっ」
やばい、楽空に言わないとだった!
白川くんから言われたことを休憩中に言おうとしたけど、楽空はソロの練習をしてくると行ってしまった。その後は本番の緊張で忘れてしまっていた。
「ねえ楽空!今から海岸沿いの青いベンチに行って!えーっと、今15:30だから16:00には帰ってきてね!片付けの時、楽空いないと困るし、先生に怪しまれるから!」
「え、なんで海岸沿いなんかに......?先生に怒られちゃうよ!」
「いいから行って!今すぐ!お見送りと片付けの最初はわたしが上手くやっとくから!早く!!」
「え......うーん、そこまで言うなら行ってくるけど......?」
「うん!行ってらっしゃい!」
楽空は何が何だか分からず首を傾げながら走り、裏口から出て行った。
ちょっと強引すぎたかな?まあいっか!
「美凪先輩!」
「はーい!」
わたしは呼ばれて走っていった。
頑張れ、白川くん。