「白川くんは、サウンドクリエイターって知ってる?」
「えっと......BGMとかを制作する人だっけ?」
思わぬ質問に、咄嗟に浮かんだ答えを口にした。
「そう。私ね、自分のピアノで奏でた曲を、それが一瞬でもたくさんの人の心に届くような音をつくりたいの。だから、そういう音楽関係の専門学校に行って、いつか誰かと音を重ねたいの......。どう?この夢?」
彼女は俺の方を向いた。
また目が合った。
さっきとは違い、黒目がかすかに輝いて見えたような気がした。
思わず目線を逸らす。
俺は、彼女がこんな風に自分を表現できる夢を持っていることに驚いた。
音をつくるサウンドクリエイター。
夢って本当に人それぞれであることを実感したような気がした。
俺は再び、彼女の方を見て言った。
「素晴らしい夢だと思う。夜瀬さんの自分の好きなことを活かしてて......。そういう正解がない自由な表現ができるものこそ、自分をより表現できるんだなって思う!」
我に帰ると、顔が熱くなってきた。
こんな風に誰かに話したことはない。
俺の言っていることは大丈夫だろうか。でも、こんなことを言っている俺は、正解がない自由な表現ができる美術の世界で自分を表現できているのか......?
まだそのスタート地点にも立っていないのに何偉そうなことを言っているんだ。
そんなことを考え、険しい顔をしていたであろう俺に彼女は、
「ありがとう!!白川くんに言ってよかったなー!あとね、もう一つ聞いてほしいことがあるの!!でもこれ誰にも言ったことがなくて......変だと思うけど話してもいいかな?」
彼女は少し俯いて言った。
「うん、いいよ」
俺はよく分からないが、なぜか話の続きを聞きたかった。