「初めてこうやって話したけど意外と親しみやすかったな、あの2人」
 「ああ、今日も来ると思わなかったからびっくりしたけど......」
 「まあ、話す人が増えることはいいことだよ!色んなこと知れるし」

 話す人......か。
 人との距離というのはいまだに分からない。
 近すぎても遠すぎてもよくない。
 俺はそう思う。

 「絵橙の絵いいね!黄色と白が海と空を照らして見える」
 急に楓が俺の絵を見て言った。
 楓に続いて、俺も楓の絵を見た。
 「楓もよく描けてるじゃん、花と葉っぱ。......ん?ってえ???この葉っぱとか花の中心部分、野菜の断面だよな......?お前よくこんなん思いつくよな!ほんとすげーわ......」
 俺は発想の凄さに興奮した。
 やっぱ楓は絵の才能がある。
 楓の方を見ると腕を組んでドヤ顔をしていた。
 「今日植物を描こうと思ってて、それで前絵橙がトマト頬張ってんの思い出してそれで描いたんだよ。お前のおかげで今日はいい絵が描けたよ。桜さんにも褒められちゃったしな!」
 楓はいつになくいい笑顔だった。
 楓は存在しないものを、あるかのように自分の絵として反映させている。発想力が突発的だ。
 楓の絵は年々成長している。
 しかし、俺の絵はあの時から止まっている。
 俺はいつまで群青の色を貫くのだろう。

 『赤色と橙色』

 きっと、この2色が絵に入ればもっと違う空の絵も描けるだろうか。

 『使いたいけど怖い』
 それを楓にも言えたら。


 誰かに言えればいいのに。