「本当にごめん___」
幼い頃からずっと聞いてきた彼の声、
なんで謝るの なんで頭を下げてるの なんで

゙涙を流してるの゙




いつも通りの朝、いつも通りの光
いつも通りの日常をいつも通り過ごす、それがいつもの目標にしている

「おはよー、」
「おはよう美香。朝ご飯早く食べちゃいなさい」
「うん、お母さんもう行くの?」
「えぇ、行ってくるわね、気を付けて行きなさいよ!」
「わかったー!!」
私の家は母子家庭で私が小さい時に事故で亡くなったらしい。顔も声も何も覚えてないけど、少しだけ本当に少しだけど寂しい気がする

「行ってきまーす!!!」
大声で叫んでも言葉は返ってこないという事は分かっていながらいつも通りの挨拶をする

のんびり歩いていたら後ろから「よっ!」っと肩を叩かれる
「びっくりしたー、蓮驚かさないでよ!」
「いつもやってるのに学ばないのはお前の方だろ」
「それはそう、だけど」正論すぎて何も出てこない
「まー、いいや美香おはよ!」
「うん、蓮おはよ」
いつも通り挨拶を交わす彼は私の幼馴染であり彼氏だ
小さい頃からずっと一緒にいて中学2年生の時に蓮から「好きだ」と伝えてきた。
私も蓮の事が好きだったから2つ返事で「私も好き、よろしくお願いします!」と言い付き合うことになった
周りには言ってないが色々噂されているらしい誰が噂し始めた分からないが色々と迷惑だ
「おい美香!!」
「え、あ、なに?」
「おま、また話聞いてなかったろ」
「そんな事ないよ、」
「じゃあなんて言ってたか言ってみろよ」
「…先行ってるねー!!」
「あちょおい!!!」
彼の言葉を無視して全力で走った。
走った先には親友の朱里がいた
「朱里ー!!」
「あれ美香?また走ってきたの」そう言う彼女はとても可愛らしく微笑む
「ちょっとねー、」
「毎朝そればっかじゃん、相変わらずラブラブだね!」
「待って私彼氏いないから!!」
「いるじゃん、れ・ん・く・ん・が!!」
「蓮!?あいつはただの幼馴染だから!!」いつも通りの会話 いつも通りが1番いいということは中学になって気づき始めた そんな事を考えていると
「美香ー!!!」
「あ、彼氏さんの登場だね」からかうように笑う朱里
「ちょっと!変な事言わないで!?」
「おじゃま虫は退散しまーす!」
「…蓮、学校ではあんまり話しかけてこないでって」
「え?別にいいだろ!俺周りに言ってるし!」
「え、嘘でしょ?」
「おん、嘘だけど?」しまった、また騙された、昔からよく蓮には嘘をついて騙される。なんでも私の反応が面白いと言っているが別に普通の反応しかしてない。

「朱里ー!」
「あ、来た。で、何話してたの!?」
「特にこれと言った話なんてしてないよ!」
「絶対嘘だ!」
「本当ですー!!」こんな会話をしていたらガラガラと教室のドアが開いた
「ほら座れー!HR始めるぞ!」と元気よく言うあの人は1年5組担任のゴリ先生こと砂田先生。完璧に体育系だから嫌われているかと思いきや男女共によく好かれている先生だ。
「美香ー!」
「え、あ、なに?」
「何回呼んでるのに返事しないんだもん!またなにか考え事?」
「え?あー、なんにも!次移動教室だよね?早く行こ!」


「終わったー!!!」
「お疲れ様?って、毎回言ってるね」
「だって毎日疲れるし!」
「聞いてないのに?」悪戯するように笑う朱里それに対して私は「もー!」といい
「ほら、早く帰ろ!」
「彼氏と一緒じゃなくていいの?」
「蓮部活だしそもそも彼氏じゃないから!!」
「はいはい早く行くよ!」流された気がする、この話を2人でしていたらキリがないという事が分かっているのだろう


「ただいまー!!」朝とは比較的小さいがいつも通り叫ぶ、返事は…返って来ない
「ま、分かってたけど」
お母さんはいつも夜遅くに帰って来るそれまで、全ての家事を終わらせておくのが私の仕事だ。ご飯はいつもお母さんが帰ってきてから食べる。この前、「先に食べてていいのよ?」と言われたが、私は「お母さんと食べたいから」と言って断った


「ただいまー」
「おかえりなさい、お母さん!!」
「わ、いい匂いね!」
「早く中入って食べよ!!私お腹ぺこぺこ」
「ふふっ、そうね!!お母さんもお腹ぺこぺこだわ」笑いながらそう言う2人、この時の会話はいつも楽しい
「じゃあ、いただき___」プルルルル
「何かしら」タイミングが悪い、いつもはこんな夜遅くに電話なんて無かった
「もしもし、あ、赤羽さんいつもお世話になっております。…え?蓮くんが、そうなんですね、ありがとうございます。では、」
「お母さん?」なんだか嫌な予感がする。蓮の事でこんな夜遅くに電話を掛けてくるなんて相当のことだ
「…美香落ち着いて聞いてね。蓮くんが、事故に遭ったって」
「え?」この後のお母さんの言葉は聞こえなかった、胸の音がドクンドクンとうるさかった
「私…行かなきゃ、ごめんお母さん!!」
「ちょっと、美香!?」全力で走った。途中道端で転けたけど気にしなかった。蓮の事で頭がいっぱいいっぱいになっていたから


「すみまっ、せん、!!蓮っの、赤羽蓮の、びょ、病室、は…」
「大丈夫ですか、?赤羽さんですね、105号室です」

「蓮っ!!!」大きな声で彼の名前を呼ぶ。そこには蓮のお母さんと眠っている蓮がいた
「美香ちゃん、来てくれてありがとう。大丈夫、??」
「は、はい、大丈夫です。それより、蓮は、」
「今は眠っているわ、大したことないから気にしなくていいってお医者様が、」
「そうですか…よかった、」
「ん。母さん誰か来たのか、?」そう話していると蓮が起き上がった
「蓮!!凄く心配したんだよ、」そう話しかけたら、蓮がこう言った
「…お前、誰だ」
「…え?蓮何言ってるの、?私だよ!?美香だよ!?」意味が分からなかった。いつもの嘘かと思っていたら
「知らねぇ俺の記憶にお前みたいなやつはいねぇよ」
「れ、ん、?」
「…美香ちゃん、ちょっといいかしら」おばさんに連れて行かれて病室の外に出た。そこで聞いたのは「蓮事故のショックで記憶を無くしたって、」泣きながら教えてくれた。私も気づかなかったけど涙を流していたらしい。そしたら、「…美香ちゃん、今から一緒に帰りましょう?お母さんも心配しているでしょう。夜遅いんだから、」そう言われて携帯で時間を見たらちょうど0時0分だった。

それからの事は全然覚えていない。悲しくて辛かった。それからは学校にも行けていないし、家事もままならなかった。
そんな生活を送っていると半年が過ぎていった。そろそろ立ち直ら無ければと思い久しぶりに外に出たらポストに手紙があるのを見つけた、差出人は書いてなく宛先は私宛だった。家の中に入って確認をしようと思い、扉を開けて入った

『美香へ
これを見ている時には俺はもう居ないだろうな…急にごめんな、俺実は癌って言われてさ!美香に悲しい思いさせたくなかったんだよ。記憶喪失っていうのも全部嘘、あの時走ってきてくれたんだよな血が結構出てたの見えたからさ?短くてごめん、最後にこれだけは言わせてくれ。
俺と、結婚してくれ』
枯れていた涙が溢れ出てきた。とめようにもとめられない、凄くしょっぱい涙。


いつもの日常というのは、あの日を境に無くなった。