双子のエルフは責任ある大仕事に見事に選ばれた。

普通は12月20日から12月24日の5日間子供の家に行くのだけれど僕たちはあまりに幼いからという理由で3日間に減らされた。
でも、サンタさんの家から出たことのない2人にとっては大冒険である。

今日の夜に出発し12月22日の朝には到着しなければならない。
そのため、2人は準備でバタバタ。
あっちへ走って行ったと思えばこっちに走ってきて。
ちょこまかと走るその姿は微笑ましい。
 
       ◇


〜夜〜

「サンタさん、準備完了しました」

お姉ちゃんはワクワクしているのかその声色はいつも以上に明るい。

「僕もできました」

洋服を整えながら僕も言う。

「洋服、似合っているよ」

サンタさんが穏やかな表情で言う。
僕たちは嬉しくてピョンピョンと飛び跳ねる。

この洋服は子供の家に行く時の特別なもの。
サンタさんと似た洋服でお姉ちゃんは赤、僕は緑のものを着ている。
ふんわりとした柔らかい生地が体にフィットする。
頭に被っているナイトキャップが少し大きく僕の視界を遮ってくる。

「あれ、少し大きかったかな?」

そう言い僕のそばへと近づいてくるサンタさん。
サンタさんが手をかざすとワンサイズ帽子が小さくなりクリアな視界に戻る。

「ありがとう、サンタさん」

ニコッと笑顔で言うとサンタさんも微笑んでくれた。

「よし、そろそろ行こうか」

2人は同時にコクリと頷く。

       ◇

子供の家に行くエルフたちはトナカイを使って行く。
2人はトナカイに乗る。

「「いってらっしゃーい」」

大勢のエルフとサンタさんが見送ってくれる。
2人は大きく手を振る。

その時、トナカイが宙に浮いた。
いや、空を駆けている。

少しずつ速度を上げて行くトナカイ。
風が目に入り、一瞬目を瞑る。
新品の帽子を片手で押さえながら、目を開けるとそこには見たことのない景色が広がっていた。

暗闇の中に光る星。
キラキラと輝いている家の光。
そして、月に照らされ真っ黒な影となる僕たち。
月は手を伸ばせば届くんじゃないかと思うほど大きく近い。
その月の光が反射している海。
風の音、木々の揺れる音、そのどこをとっても素晴らしい。
自然の雄大さは息を呑むほど綺麗だった。
言葉が出てこないほどの美しさ。

トナカイが安定したところで僕たちは話し始めた。

「今回行く家の子供についての資料、目を通した?」

うん、と頷きながら資料を取り出す。

<資料>
子供の名前:アンナ・ヨハンソン
年齢:6歳
見た目:金髪で碧色(へきしょく)の目
    髪の長さは肩の長さくらいで癖っ毛
性格:明るく、真面目な女の子
よくしていること:お絵描き、歌う、読書、自然と遊ぶ

最初に目を通した時、疑問に思った。
自然と遊ぶってどういうことだろう?
思わず口から言葉が出ていたらしい。
お姉ちゃんが気付き、

「会ってみれば分かるんじゃない」

と少し大人っぽい表情で笑った。
僕たちは少しずつ成長しているのだろう。
幼いながらにそう感じた。

そうこう話していると、トナカイが高度を落としはじめた。
もうすぐアンナちゃんの家に着くみたいだ。