「お姉ちゃ〜ん、サンタさんから呼び出しだよ〜。」


お姉ちゃんの方へ向かってトタトタと走る。
サンタさんのおもちゃ工場で働いている僕たち双子のエルフ。
僕たちは茶髪で赤と緑のクリスマスカラーのオッドアイを持つ双子である。
お姉ちゃんと弟の僕、2人でペアを作り仕事をこなしている。
おもちゃ工場は軽快な音楽が溢れていてみんなリズムに乗って作業を行なっている。
サンタさんが僕たちエルフが作業をやっていて辛いと感じないようにという計らいだ。

「わかった、今行く!」

急いで作業を止めてこちらへ向かって走ってくる。
サンタさんの家は僕たちエルフにとってはとてつもない広さで走っても走っても目的地に届かない。
そりゃあ、僕たちエルフの身長はとても小さく8cmくらいだから当然である。
お姉ちゃんが僕のところへ辿り着いたとき2人は手を合わせる。

「「せーのっ!」」

息ぴったりの掛け声が響く。

『転移魔法 リークバット』

2人がふんわりとした白い光に包まれる。
思わず目を瞑る。

そして次に目を開けたときには、サンタさんがいる司令室に到着していた。

「やったね、大成功」

お姉ちゃんとハイタッチをしてニコッと笑う。

「さすが、双子。僕が与えた魔法を使いこなすなんてね。」

この優しく落ち着いた声色の人物こそが僕たちエルフ全員が尊敬しているサンタクロース。
赤い服装に白い髭、チャーミングな笑顔。どこをとっても素敵なお方である。

この魔法もサンタさんからの計らいの1つ、いやプレゼントである。
魔法は2人で協力しないと使えないから、息が合わないと成功させることは難しいらしい。
だけど、僕たち双子は生まれた時から息ぴったり。
他にも、色々な魔法が使えるようにとサンタさんが時々司令室に呼び出して教えてくれる。
今回もその件かな?と思っていると僕たちの心をまるで読んだかのようにサンタさんが言う。


「今日は魔法を教える件ではなくてね、大事なお仕事についてなんだ」


いつになく真剣な表情になるサンタさんに僕たちも気を引き締める。


「君たちには子供達が良い子にしているか見てきて欲しいんだ」


思わず同じ方向に首を傾げきょとんとする2人。
幼いためまだ状況を上手く飲み込めない。

「幼い双子のエルフの才能を見込んでの話なんだ。」

サンタさんはそこから1つ1つ丁寧に仕事について説明してくれた。
説明を全て聴き終わってやっと理解した2人は少し興奮気味。

「どう?やってみる?」
サンタさんの落ち着いた声音で我にかえり冷静になっていく。

2人で顔を見合わせる。
答えはもう決まっている。

「「やります」」

やる気に満ち溢れている姉と楽しみな気持ちと不安な気持ちが入り混じっている弟の声が重なった。