木香薔薇:花言葉 あなたにふさわしい人


「なんか今日いつもと違う?」
彼の指摘にどきりとする。


「そう?」
「んー……あ、髪染めた」

違う違う。そうじゃないのに。
髪を染めたのなんて先週だけど。そのとき気づかなかったのに、なんで一週間後に気づくの?

いつもよりかわいいって言葉が欲しくって、指先にネイルをしたし、服だって新しく買った。

ピンクや青、パープルの下地を買って、自分の肌に何色が合うか調べたり、アイシャドウだって色々試したんだよ。

前にこの子かわいいって言っていたアイドルみたいにはなれなくても、好みに近づきたかった。
私の自己満足でしかないのかもしれないけど、ちょっとくらい気づいてよ。

私が拗ねていることに気づいたのか、彼は機嫌を取るように手を繋いでくる。
それが不満で手を離した。

こんなんじゃ私の努力は報われない。
ねえ、どうしたらかわいいって言ってもらえる?


「……髪、ショートにしようかな」
「絶対似合う。見てみたい!」

目を輝かせながら声を弾ませる彼。
その反応はちょっとずるい。

私は俯いて、そのまま頭を彼の胸元に押しつける。


「なに、どーした?」
「……絶対次はかわいいって言わす」

呟きが聞こえたのか、彼が笑った。