木蓮：花言葉「忍耐」



『次、いつ会える？』聞きたかった言葉を飲み込んで、笑みを浮かべる。

面倒だとか、重たいとか思われたくない。
以前だったら毎日のように学校で会えていたけれど、進路が別々になった今の私たちが会えるのは月に一度くらい。


さっきから彼のスマホの通知が止まない。

同じ大学の人たちだって言っていたけど、その中に女の子の名前もあったのを見てしまった。

浮ついた感情がそこにあるとは思っていないけれど、それでも複雑で、心が焼けこげそう。


自由を奪いたくはないけれど、時々彼の視線を永遠に繋ぎ止めたくなる。


そんな私の思考は口には出せないけれど。
真面目な彼に言ったら、悩ませてしまうから。


私の一言のせいで人間関係を狭くしてストレスを溜めてほしくない。
それが蓄積されて、いつの日か私たちの関係が崩れるのが怖い。


彼の負担にならないために、口角を上げる。

「また連絡するね」
上手く笑えているだろうか。

一緒に過ごす時間はあっというま。もう一度朝からやり直せたらいいのに。


軽く手を振ると、彼の大きな手に掴まれる。

そしてそのまま、気づけば腕の中にいた。


「帰るのやだな……」

彼がぼそっと呟いた声が聞こえて、私は背中に手を回す。

服から香る嗅ぎなれた柔軟剤の匂いと、私よりも高い体温。



「私も……まだ離れたくない」

このままずっと一緒にいられたらいいのにね。
抱きしめられた嬉しさと同時に、一日の終わりの寂しさを感じる。

だけど——次の約束があれば耐えられるはず。



「次、いつ会える？」

そしていつか、この日々を懐かしく思いながら一緒に過ごせる未来がきますように。