チューリップ(オレンジ):花言葉「照れ屋」

人と目を合わせられなくて、いつも下を見ながら話してしまう。
それが私の癖だった。


誰かと視線が重なるのは恥ずかしくて、落ち着かない。

自意識過剰だと言われてしまうかもしれないけれど、目が合うと心の奥まで見透かされるような気がする。


だけどせっかく、君と隣の席になれたから。
今日こそは、目を見て言葉を交わしたい。


騒がしい教室の中で、隣の席の椅子が引かれる音が鮮明に届く。
視線を上げると、眠たげに机に頬杖をつく彼の姿。


「っ、おはよう!」

勇気を振り絞った声は裏返ってしまい、恥ずかしくて俯きたくなる。けれど、ぐっと耐えた。



「おはよ」

私の方を見た彼は春風みたいにふわりと笑う。


人の視線から逃げてばかりだった私は、初めて人から目が離せなくなった。