アリミアに呼ばれた僕とマリアは、いくつかハンカチーフを持って部屋で待っていた。

「二人とも待たせてごめんね」

 椅子に座ったアリミアはどこか嬉しそうに微笑んでいた。今日、王妃主催のお茶会があると言っていた。

 そんなに楽しいお茶会だったのか。

「二人ともガーデン商会の宣伝がしっかりできたわよ!」

 どうやらお茶会でハンカチーフと香水の宣伝をしてきたらしい。だから、嬉しそうにしていたのか。

 僕達が呼ばれたのは、今後どういう形で売り出していくかの話し合いだ。

「マリアちゃんはどうやって売るか考えているの?」

 マリアはハンカチーフを取り出して並べた。どれもタマ達と作った物で、少しずつ技術が上がってきているのか以前のより刺繍の模様がはっきりして綺麗に仕上がっている。

「やっぱりマリアちゃんの才能に驚きだわ」

 アリミアもハンカチーフを見て驚いていた。タマ達と分業することで、質を上げているらしい。ハンカチーフをタマ達、刺繍をマリアがやっている。

「私達のアリアガーデンは一般の方にはハンカチーフをそのまま売って、貴族の人達には家紋付きのハンカチーフを売ろうと思っています」

 僕達のお店は平民街で売る予定になっている。ただ、貴族と一般人が購入できるものになれば、貴族は買わなくなるという判断だ。生地の違いで値段は変わっても、同じものならお金持ちの一般人なら購入できてしまう。

 そこでマリアはさらに値段を高くして、貴族の証である家紋を入れることにした。それなら貴族と一般人との差別ができるだろう。

 マリアはしっかりと自分のやらなきゃいけないことを考えていた。

 一方の僕はどうやって売り出すのかも考えてない。ただ、貴族達が本当に香水が欲しいのかもわからない。そこはアリミア頼みになっているのが正直なところだ。

「じゃあ、リックくんの香水だけどどうやって売り出すかだけど、何かアイデアとかはあるかな?」

 マリアと同じで差別化をするなら、その人に合った匂いやオリジナルの香水が無難なんだろう。ただ、ゴブゥが作れる匂いの種類にも限度がある。

 せっかく作るなら、その人達の思い出になる匂いがする香水を作ってあげたい。

「ゴブゥにはいくつかの匂いがする香水を作ってもらうとして、貴族達には自分達の好きな花を持ってきてもらうのはどうでしょうか?」

「その花を使って作るってことね?」

「はい。きっと皆さん思い出の花や自然の香りがあると思います。その匂いが再現できたら良いのではないかと思います」

 再現できるかはわからないが、母と父はいつも薬草と木の匂いがしていた。その匂いが再現できれば亡き人を思い出すことができると思ったのだ。

 会えない人に匂いで懐かしく感じてもらう。それが香水でできないかと思ったのだ。

「それは画期的ね! 売り出すには中々難しいけど、誰もが両親、亡くなった夫への気持ちを持っているはずよ。あっ、ちょうど良い人を見つけたわ」

 アリミアは紙とペンを持って何かを書き出した。そこにはソフィアの名前もある。

「今は亡き先代の王、グリム王の香水が作れないかしら?」

 それはソフィアの祖父にあたる人だった。グリム王の夫人はまだ生きているが、グリム王が亡くなってから塞ぎ込んで城から出てこないらしい。

 まずはソフィアに家庭教師をやってもらっている時に話を聞いてみることになった。