一方、リック達が勉強している間に私は香水とマリアが作ったハンカチーフの宣伝活動でお茶会に参加している。

 今日は王妃が主催のお茶会で、今もどことなく緊張感がピリピリと伝わる。

 この間のサゲスーム公爵家のことがあってから、子ども達の教育ができていないのは夫人の管理および教育が行き届いてないからだと言われるようになった。

 子ども達はいつの間にか大きくなり、自分達で吸収して成長していく。

 それを親の管理不足と言われれば仕方ないことだ。

 大事な子どもには変わりはないが、いつまで経っても子どもというわけにはいかない。

 子ども達には自立してもらわないといけないし、それこそ爵位を継いでもらわないといけないのだ。

「それで、サゲスーム伯爵(・・)家の次期伯爵様は大丈夫なのかしら?」

 王妃の一言で空気が再びピリつく。

「この度は愚息が皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません。次期伯爵には、二度とあのようなことが起きないようちゃんと教育をして参ります」

「そうしてもらわないと困りますわね。ねぇ? 公爵夫人?」

 そこで私に話を振るところが彼女の意地悪なところだ。少しニヤニヤしているのを見ると私にわざと聞いてきている。

「そうね。私達で保護しているリックは相当落ち込んでいたわ。まぁ、それでもオオバッカ様がリックにあれだけの仕打ちをしたからこそ巡り合わせてくれたようなものですからね」

 私はサゲスーム伯爵夫人をさらに畳み掛ける。正直、あの場所にすぐに駆けつけていたら、命をかけてでもリックを守っただろう。

 それだけ私達公爵家にとってリックとマリアは大事な家族だ。

 今でもあのオオバッカに張り手がしたいところよ。

「本当に申し訳ありませんでした」

 その場で涙を溢す彼女も子ども達の親だ。子を思う気持ちとしては一緒なのは変わらない。

 元は同じ王族を支える公爵家。

 それがいつのまにか自己肯定感や自己価値感を優先してしまった結果だろう。子は親に似ているというぐらいだ。

 えっ……?

 オーブナーは私に似ているかって?

 全然似ていないわよ!

 って言いたいところだが、きっと彼の誰よりも守りたいという気持ちは私から受け継いでいるわね。

 私は胸を張ってオーブナーは良い息子として育ったと言いたいわ。

「サゲスーム伯爵夫人も今後の発展のために頑張ってくださいね。これで涙を拭いてちょうだい」

 私はマリアからもらったハンカチーフに香水を一振りして渡す。

 あの香水は人の気持ちを落ち着かせる効果があるのをすでに知っている。

 ゴブゥちゃんは本当にすごい子だからね。

「この匂いはなんですか?」

 サゲスーム伯爵夫人が気づいたことで、周りの貴族夫人が注目を始める。私はこれをずっと狙っていたのだ。

「これは香水です。実は私商会を始めることにしたのよ」

 周囲ではざわざわとあまり良くない言葉が広がっていく。やはり貴族夫人が働くことに良い印象を受けないのが、一般的になんだろう。

――パンパン!

 王妃が手を叩くことでその場は静かになった。

「それでなぜ商会を始めることにしたのかしら?」

 王妃はニヤリと笑っていた。

 ああ、これは完全に楽しんでいるんだろう。

 私と王妃って昔からの幼馴染で、一緒に意中の人である殿下と次期公爵を落とそうと計画した仲だからね。

 本当にあの子は性格が悪いんだから!