今日は待ちに待ったソフィアによる勉強が始まる。モスス達も含めてみんなで集まって勉強することになった。

 ひょっとしたらモスス達も話せるようになったらと淡い気持ちも抱いている。

 フェンリルやワシも僕には聞こえるように話していた。他の人には聞こえないが、何か話せるようになるきっかけになれば良いと思っている。

 モスス達もやる気満々で、今もちゃんと座って待っている。

「ソフィア先生(・・)よろしくお願いします!」

「ふふふ、先生って言われるのも悪くないわね。よろしくお願いします」

 ソフィアも先生と呼ばれて嬉しそうだった。

 大きな魔道具にソフィアはいくつか文字を書いていく。

 勉強をするときには、魔道具に文字を書いていくと、黒板にその文字が映し出される仕組みだ。

「まずはこの国の言葉は五つの母音といくつかの子音で成り立っています」

「母音と子音ですか?」

「今日はその母音の勉強をしていきます。基本的に子音だけで、言葉は成り立たず母音のみもしくは母音とセットになります」

 魔道具に書かれた文字を真似して紙にペンで書いていく。モスス達も一生懸命に書いていくが、手がない毛玉と体の小さいタマ達には無理そうだ。

 そういえば、タマはいつのまにか増えて今は三体になった。

 毛玉はマリアの膝の上に乗り、タマ達は僕の書いた紙を覗き込んでいる。

「まずは力強い発音の母音"a"は、勇気と力強さを象徴する守護神です。彼らは勇敢に戦い、困難に立ち向かうために戦士たちの心に勇気と不屈の精神を注ぎ込み、彼らの力を与えます」

「このように母音には神様が宿っていると言われています」

 母音の"a"・"i"・"u"・"e"・"o"は全て神に由来しているらしい。

 勇気と力強さを象徴する守護神の"a"。

 魔法と知識を象徴する魔法神の"i"。

 自然と動物で癒す生命神の"u"。

 喜びと芸術を結びつける創造神の"e"。

 富と繁栄、そして成功を願う商業神の"o"。

 この五つで母音が形成されており、この国の代表となる神様もこの五人だと言われている。

「この五つの母音が基本中の基本になるから、まずはこれを覚えないと何も始まらないのよね。じゃあ、次は発音するわね」

「ア! イ! ウ! エ! オ!」

「はい、一緒に!」

「ア! イ! ウ! エ! オ!」
『キュ! キュ! キュ! キュ! キュ!』

 モススは一緒に発音するが、どうやら一緒の音になるらしい。何かフェンリルやワシとは違う声帯を持っているのだろうか。

 話せないことに落ち込むモススを優しくモスモスする。

 少しはこれで元気になってもらえたら嬉しい。

「話せなくても僕はモスス達の心は伝わっているよ?」

 僕の言葉を聞いてモスス達は集まってくる。勢いよく集まってきたため、机の上に置いてある紙はぐちゃぐちゃだ。

「ふふふ、本当に家族に愛されているわね。ただ、勉強は静かにね!」

 ソフィアに言われてみんな姿勢を正した。ゴブゥはいつもの敬礼をしている。

「じゃあ、もう一度発音しますね!」

 その後も公爵家の中はたくさんの声が響いていた。

 思ったよりも勉強は楽しく、今後も続けるのが楽しみになってきた。