今日はみんなでお店の場所選びに来ている。場所に関しては貴族街と平民街のどちらに店舗を出すかと話題になった。

「んー、ここはどうだ？　お互いのお店が繋がっているから、マリアが何かあっても良さそうだぞ？」

　マリアのドレス自体は貴族向けに作られているが、今後もいろんな服を作る可能性もある。

　貴族は平民街にも訪れるため、平民街に作る方が売り上げが見込めるのではないかというアリミアの意見だ。

　そこに対してはオーブナーも同じ意見で、軽食屋でも貴族が食べに来るところだとかなり質を上げないといけないらしい。

　オーブナーが作る料理は、どちらかといえば一般人向けで、僕達が美味しいと思うのも、そういう理由らしい。

　敷居を低くして、誰でも来やすい軽食屋を作ると意気込んでいた。

　最終的には貴族達に変な対応をしても、平民街だから仕方ないという理由になるのも平民街にすることになったポイントだ。

　ちなみに平民街であれば、ロンリーコンとショタッコンが店の護衛に名乗りをあげた。

　Sランク冒険者は特にやることもなく暇らしい。

「それは私がお手伝いするってことで合ってる？」

「いやいや、お前はこんなところで働くなよ。他の貴族が来たくても来れないだろ」

　ソフィアも今回の話に参加しているが、前よりオーブナーとの仲は良さそうだ。ただ、勉強不足の僕達よりは、貴族相手にはソフィアが対応した方が良いと思う。

「ふふふ、素直に軽食屋の手伝いをして欲しいって言えば良いのにね？」

「なっ、何を言って――」

「オーブナーそんなに私のことを――」

「おいおい、二人とも助けてくれよ！」

　オーブナーは僕達に泣きついてきた。そんなに一緒にやるのが嫌なんだろうか。

「僕はみんなとお店をやりたいな。一人よりきっと楽しいですよ？」

　前みたいにみんなで宿屋をしていた時は、僕の中で良い思い出になっている。だから、みんなでお店をやるのを楽しみにしていた。

「ははは、まさかリックくんにも裏切られるとはね」

　そんなつもりは全くなかったが、どうやら僕はオーブナーを裏切ってしまったらしい。僕に言われたらオーブナーは仕方ないかと言っていた。

「あっ、そういえば私商会を開いたのよ」

「はぁん！？」

　アリミアの言葉にオーブナーは驚いていた。オーブナーの話では、基本的に貴族の女性が外で働くことはないらしい。

　爵位を持った夫のサポートをする。それが貴族の女性の一番の仕事だ。

　だが、この意見に反対して社会に進出したい貴族女性もいる。

　それがアリミアやソフィアだった。

　公爵家は働くことに関しては特に反対はなく、むしろ僕達の力になってくれと、背中を押してくれたらしい。

「そして商会名は"ガーデン商会"にしたわ」

　ガーデンとは植物や花々を栽培・管理し、美化された屋外の空間のことを言うらしい。

　そんなガーデンは、貴族の家や公共の場、宿屋やレストランにも存在している。

　ガーデン商会がみんなの生活の一部になるようにって名前があるらしい。

「それにマリアちゃんの名前と相性がいいのよ？」

「私の名前ですか？」

「そうよ。あなたの"ア(・)リア"という名前を使いたくてね」

　アリアは名前を変える前のマリアの名前だ。僕達はあの時名前を置いてきた。

　ただ、子を持つ母としては親からもらった初めてのプレゼントを大事にして欲しいとアリミアは言っていた。

　そこでできたのが"アリアガーデン"だ。

　マリアが自分の名前を忘れないように。

　そして、そのマリアが作る服が庭のようにどこにでも存在するというコンセプトらしい。

「ちなみ"ラックガーデン"も作る予定よ？」

「へっ！？」

　まさか僕の名前で同時にお店を作ることになっていたなんて。ただ、僕ができることなんて限られている。

　マリアみたいに何かを作れるわけではない。

「あなたには助けてくれる大事な家族がいるわよね！」

　そう言ってアリミアの側から出てきたのはゴブゥだ。

　最近部屋にいないと思ったら、アリミアと一緒に過ごしていたらしい。

　どうやらゴブゥを主体のお店"ラックガーデン"を始めるらしい。