僕は案の定、城の中で迷子になっていた。この間は中央に庭があったため、庭ならすぐに行けると思っていた。

 それなのにいくら歩いてもあるのは広い廊下と部屋の扉だけだ。

 モスス達もマリアのお手伝いをすると言っていたため、僕は一人寂しく城の中を彷徨っている。

「誰かいないのかな?」

 さっきから人を探したが誰一人も歩いていない。明らかに変わったその空間に戸惑うことしかできなかった。

「君こんなところでどうしたんだ?」

 突然声をかけられるとそこには分厚い紙の束を持った少年がいた。少し顔が疲れている少年は、そこまで年齢は変わらない気がする。

「あのー、迷子になったんですがここはどこですか?」

「本当に迷子なの? ここは悪いことをした貴族達が幽閉されているところだぞ」

 それを聞いて僕はオオバッカのことを思い出した。ひょっとしたらどこかの扉を開けた先に彼はいるのかもしれない。

 流石にそんなところにいたら誰でも怪しむだろう。ただ、僕もその少年がここにいたことを怪しんでしまう。

「きっと僕より君の方が怪しまれると思うけどね」

 僕の思っていたことがバレて驚いてしまった。

「今バレたと思っただろ?」

 彼は僕の心を読む天才だ。初めて会う子だが、この子には嘘をついてはいけないような気がした。

「図書室に行く予定だったんだけど、場所がわからないから庭で聞こうかと思って……」

「図書室に行くのに庭で聞く? 庭も図書室も反対だよ」

 どうやら僕は反対方向に歩いていたらしい。さすがに反対に行けば、いくら歩いても庭が見えてこないはずだ。

 図書室は庭の近くにあるらしい。一度庭でソフィアと会っているため、図書室の場所はわかっていると判断されたのだろうか。

「僕が連れて行こうか?」

「本当に!? 道がわからなかったから助かったよ」

 僕は少年に図書室に案内してもらうことになった。彼が持っていたのは本と言ってたくさん文字が書かれていた。

 図書室にはその本がたくさん置いてあり、昔のことや知識がそこには書いてあるらしい。

 ちなみに彼はアンディと名乗っていた。どこかで聞いた記憶もあるが、覚えていないってことは全く知らない人だろう。

「それで文字が読めないのに図書室に何か用があるのか?」

「今日は勉強を教えてもらうために行くんだ」

 事前に打ち合わせをするということは、きっとある程度教えてみて授業の内容を考えるのだろう。ミリアムも事前に貴族はテストをして内容を考えると言っていた。

「そうか……。まぁ、僕には必要ないことだけどね」

 文字が読めると勉強はしなくても良いのだろうか。それなら文字を読むのを第一優先にしても良さそうだ。

「なら、僕の友達になってくれないかな?」

「へっ!?」

 いきなり友達になって欲しいと伝えたら驚いた顔をしていた。心が読める彼も僕の言葉にびっくりしているようだ。

「文字がわかる友達がいたら、わからないところは聞けるかなって」

「それは家庭教師でもいいんじゃないか?」

 確かに彼の言っていることは合っている。ただ、本音は一緒に話せる同年代の友達が欲しい。

 僕にはロンリーコンやショタッコンと年齢が離れた友達しかいない。

「なら、何も教えてくれなくていいから友達になってくれないかな?」
 
「図書室に着いたよ。じゃあ、またね(・・・)

 たくさん話をしていると、いつの間にか図書室に着いてしまった。まだまだ話し足りないのに少年は急いでどこかへ行ってしまった。

 結局彼とは友達にはなれなかった。

「はぁ……はぁ……僕に友達って大丈夫なのか? 貴族の嫌われ者なのに――」

 少年は柱の影に隠れて息を整えていた。