僕はお店ができるまで冒険者活動を中心に始めることにした。すでに冒険者ギルドの場所は把握しているため、一人でギルドまで行くのはお手の者だ。
「ここはどこなんだ?」
そんなことをさっきまで思っていた。いつもと同じように曲がったつもりが気づいた時には、知らない道にいる。
王都にも路地裏があるのだろうか。お店や人もいない薄暗いところに来てしまった。
「ほほほ、また珍しいところに来たもんだ」
声をかけてきたのは、道端で売り物をしているお婆ちゃんだ。布の上に直接何かを売っているようだ。
「あのー、大通りに行くにはどうすればいいですか?」
「ほほほ、なになに? ここにある商品がなんだって?」
「大通りに行きたいです!」
「アクセサリーが欲しいのか!」
何度も大通りの道を聞くが、お婆ちゃんには伝わらないようだ。耳が遠いのか聞くたびに、売っているアクセサリーについて教えてくれる。
あまりにも言葉が伝わらないため、お礼を伝えて再び歩き出すことにした。
「せっかく来たのに買っていかないのかい?」
お婆ちゃんは寂しそうな顔でこっちを見ていた。確かに身なりは整っていないし、どこか昔の僕に似ていた。
きっと食べていくにも必死なんだろう。大通りでお店をするには、許可が必要だし場所を借りるのにお金を払わないといけない。
だが、こういう路地裏であれば何も言われないのだろう。
今の僕はそこまでお金に困っているわけでもない。きっと僕がお婆ちゃんに会えたのも何かの縁なんだろう。
モススもそう思っているのか、頭の上で必死にお婆ちゃんの元へ戻るように髪の毛を引っ張っていた。
「んー、それならこれをもらってもいいですか?」
僕は手前にあるペンダントを買うことにした。何かの花なのか、中心が空洞になっており、細長い花びらのようなものが付いている。
いろいろなデザインがあったが、なぜかそのペンダントに暖かみを感じた。
「金貨1枚じゃ!」
「金貨1枚!?」
金貨1枚だと何日も生活できるほどの金額だ。流石にお金を持っていても、ペンダント一つでその値段は高い気がする。
「あー、腰が痛いのう。一つでも売れたらゆっくり休めるんじゃがな」
チラチラと見てくるお婆ちゃんに僕は金貨を渡した。買うって言ったからここは仕方ない。また薬草を見つけて買い取ってもらえれば金貨ぐらい稼げるだろう。
「毎度! 大通りならあっちじゃよ」
僕はペンダントを持って言われた通りに歩いていく。そういえば、さっきのお婆ちゃん話が通じていた気がするような……。
「本当に大通りに来たよ……」
言われた通りに歩いていくと大通りに着くことができた。しかも、冒険ギルドの横に出てきたのだ。
冒険者ギルドの前にはSランク冒険者のロンリーコンがキョロキョロとしていた。
「おはようございます」
元気に挨拶すると、ロンリーコンは僕をジロジロと見ている。何か悪いことでもしたのだろうか。
「時間になっても来なかったから心配だったぞ」
「時間ですか?」
今日は冒険者ギルドに行くとマリアにしか伝えていないはず。マリアがロンリーコンに伝えたのだろうか。
「あっ!? いや、俺の勘違いだったかな」
どこか誤魔化すように頭を掻いていた。本当に勘違いをしていたのだろう。
Sランク冒険者でも人なら間違えることぐらいある。大人になると決めた僕はそこを気にするような人間ではない。
「それで右手に持っているペンダントはなんだ?」
僕はペンダントをつけるのを忘れていた。あまりにも値段が高くて、落とさないように大事に握っていたのかもしれない。
「さっき路地裏で買ったんです!」
「路地裏?」
「ほら!」
僕は出てきた路地裏を指差すが、そこには隙間も存在していなかった。あるのは横並びに建つ家だけだ。
「あれ? さっきまで道があったはずが――」
「ははは、魔女の悪戯にでもあったんじゃないか」
前に短杖をレンタルした時も、オーブナーも似たようなことを言っていた。
もし、あのお婆ちゃんが本当に短杖をレンタルした時と同じドワーフなら杖のお金を回収しにきたのかもしれない。
そう思えば金貨1枚はそこまで高くはないだろう。
僕はペンダントをつけて冒険者ギルドに入った。
【スキル:太陽の手を覚えました】
冒険者ギルドは賑わっており、何を言われているのか僕には聞こえなかった。
「ここはどこなんだ?」
そんなことをさっきまで思っていた。いつもと同じように曲がったつもりが気づいた時には、知らない道にいる。
王都にも路地裏があるのだろうか。お店や人もいない薄暗いところに来てしまった。
「ほほほ、また珍しいところに来たもんだ」
声をかけてきたのは、道端で売り物をしているお婆ちゃんだ。布の上に直接何かを売っているようだ。
「あのー、大通りに行くにはどうすればいいですか?」
「ほほほ、なになに? ここにある商品がなんだって?」
「大通りに行きたいです!」
「アクセサリーが欲しいのか!」
何度も大通りの道を聞くが、お婆ちゃんには伝わらないようだ。耳が遠いのか聞くたびに、売っているアクセサリーについて教えてくれる。
あまりにも言葉が伝わらないため、お礼を伝えて再び歩き出すことにした。
「せっかく来たのに買っていかないのかい?」
お婆ちゃんは寂しそうな顔でこっちを見ていた。確かに身なりは整っていないし、どこか昔の僕に似ていた。
きっと食べていくにも必死なんだろう。大通りでお店をするには、許可が必要だし場所を借りるのにお金を払わないといけない。
だが、こういう路地裏であれば何も言われないのだろう。
今の僕はそこまでお金に困っているわけでもない。きっと僕がお婆ちゃんに会えたのも何かの縁なんだろう。
モススもそう思っているのか、頭の上で必死にお婆ちゃんの元へ戻るように髪の毛を引っ張っていた。
「んー、それならこれをもらってもいいですか?」
僕は手前にあるペンダントを買うことにした。何かの花なのか、中心が空洞になっており、細長い花びらのようなものが付いている。
いろいろなデザインがあったが、なぜかそのペンダントに暖かみを感じた。
「金貨1枚じゃ!」
「金貨1枚!?」
金貨1枚だと何日も生活できるほどの金額だ。流石にお金を持っていても、ペンダント一つでその値段は高い気がする。
「あー、腰が痛いのう。一つでも売れたらゆっくり休めるんじゃがな」
チラチラと見てくるお婆ちゃんに僕は金貨を渡した。買うって言ったからここは仕方ない。また薬草を見つけて買い取ってもらえれば金貨ぐらい稼げるだろう。
「毎度! 大通りならあっちじゃよ」
僕はペンダントを持って言われた通りに歩いていく。そういえば、さっきのお婆ちゃん話が通じていた気がするような……。
「本当に大通りに来たよ……」
言われた通りに歩いていくと大通りに着くことができた。しかも、冒険ギルドの横に出てきたのだ。
冒険者ギルドの前にはSランク冒険者のロンリーコンがキョロキョロとしていた。
「おはようございます」
元気に挨拶すると、ロンリーコンは僕をジロジロと見ている。何か悪いことでもしたのだろうか。
「時間になっても来なかったから心配だったぞ」
「時間ですか?」
今日は冒険者ギルドに行くとマリアにしか伝えていないはず。マリアがロンリーコンに伝えたのだろうか。
「あっ!? いや、俺の勘違いだったかな」
どこか誤魔化すように頭を掻いていた。本当に勘違いをしていたのだろう。
Sランク冒険者でも人なら間違えることぐらいある。大人になると決めた僕はそこを気にするような人間ではない。
「それで右手に持っているペンダントはなんだ?」
僕はペンダントをつけるのを忘れていた。あまりにも値段が高くて、落とさないように大事に握っていたのかもしれない。
「さっき路地裏で買ったんです!」
「路地裏?」
「ほら!」
僕は出てきた路地裏を指差すが、そこには隙間も存在していなかった。あるのは横並びに建つ家だけだ。
「あれ? さっきまで道があったはずが――」
「ははは、魔女の悪戯にでもあったんじゃないか」
前に短杖をレンタルした時も、オーブナーも似たようなことを言っていた。
もし、あのお婆ちゃんが本当に短杖をレンタルした時と同じドワーフなら杖のお金を回収しにきたのかもしれない。
そう思えば金貨1枚はそこまで高くはないだろう。
僕はペンダントをつけて冒険者ギルドに入った。
【スキル:太陽の手を覚えました】
冒険者ギルドは賑わっており、何を言われているのか僕には聞こえなかった。