俺はまたあいつから逃げ出した。遠くで見ているだけならよかったが、近くにいたら思い出してしまう。
俺は"仲間を見捨てた裏切り者の騎士"と呼ばれている。
ソフィアを守るために仲間を見捨てて逃げた。それが他の騎士や貴族から俺の行動に憤慨し、信頼を失った。
その行為が裏切りと言われ、俺に対する怒りと復讐心を抱く者もいる。だから城には近づかないようにしていた。
今回も騎士の格好をしているが、見た目を偽っている。
「オーブナー待って!」
追いかけてきたのかソフィアは俺を呼び止めた。
「お姫様は早くパーティーに戻った方が――」
「オーブナー聞いて! 私、あの時の出来事に後悔しているの」
あの時も同じだった。騎士を辞めて逃げ出した俺をソフィアは止めた。それでも俺は言い訳をして逃げることを選択した。
別に騎士としての未練はない。目の前にいるソフィアを守ることができればそれでよかった。
だが、それも選択肢として間違えていたのだろう。結局は幼かった彼女を傷つけてしまった。
現実を彼女に分からせる必要がある。
「あなたと俺は殿下とただの騎士でした。それ以上でもそれ以下でもないです。もう何も関わりはないんです」
「ええ、それはわかっているわ」
「ならなんでそんな顔で俺を追いかけてくるんだよ」
ソフィアは目から涙を流している。彼女は俺を止めて後悔していると言っていた。ならそんな顔する必要はないはずだ。
「私が止めたことであなたをずっと傷つけていたのはわかっているわ。私の勝手な気持ちで縛りつけようとしていた」
確かにあの時のソフィアは俺に騎士としてずっと側に居てと言っていた。俺もそのつもりで命を捧げた。
だが、裏切り者の騎士が隣にいれば彼女は非難され続ける。
「俺達が一緒にいることはできないんだ」
それはお互いに君主と忠実な臣下以外の気持ちがあってもだ。
「だから私は止めたことを後悔したわ。だって、私があなたに付いていけばよかったのよ」
彼女は俺の手を握り、真剣な表情をしていた。
「ん? どういうことだ?」
彼女の言っていることが理解できない。
俺に騎士として残るように言ったのを後悔していると言っていた。それは俺を縛りつけるためだったということも理解している。
ん?
これは縛りつける以外にも方法があったと言っているのだろうか。
「ん? ちょっと待て。俺に付いていけばよかったって――」
「だからそのままの意味よ。別にあなたが騎士である必要はないじゃない! 私が王族から抜ければ良いことよ。ねぇ、簡単でしょ?」
いや、王族から抜けるってそんなに簡単なことじゃない。この無茶苦茶な感じはリックで慣れてきたと思っていたが、そうでもなかった。そもそも彼女は元から破天荒なタイプだ。
小さい頃は友達が出来たと言って、聖獣を紐でくくって引っ張ってくるぐらいだった。あの時は、見たこともない聖獣に城の中は大パニックになっていた。
「俺にも考える時間をくれ」
どう考えても解決案が出ないが、俺は彼女からもう離れることができないと確信した。きっと逃げ出しても、今の彼女なら追いかけてくるだろう。
どこかでしっかりと彼女と向き合う時間を作るのが必要だ。
「また今度会って――」
「誰かお兄ちゃんを助けて!」
聞き慣れた声が俺の耳に届いた。そういえば、リック達をパーティー会場に置いてきたことを忘れていた。
「今の声は――」
「たぶん、マリアちゃんの声よ!」
声が聞こえたのは俺だけではなかった。隣にいるソフィアも聞こえていた。
俺は魔力を広げてリックの位置を探る。森で一緒に薬草を採取する時のために覚えた魔法だ。
難易度も高いし、魔力消費量も多いがこれが一番リックを探しやすい。
「中央の庭園にいるぞ!」
俺は急いでリックがいる庭園に向かった。
「なら、私も一緒に行くわ」
「えっ?」
「いつまでも守ってもらう弱いソフィア殿下ではないからね」
彼女は魔法を使って体が浮いていた。
どうやら彼女の破天荒な性格は変わらないようだ。
俺は"仲間を見捨てた裏切り者の騎士"と呼ばれている。
ソフィアを守るために仲間を見捨てて逃げた。それが他の騎士や貴族から俺の行動に憤慨し、信頼を失った。
その行為が裏切りと言われ、俺に対する怒りと復讐心を抱く者もいる。だから城には近づかないようにしていた。
今回も騎士の格好をしているが、見た目を偽っている。
「オーブナー待って!」
追いかけてきたのかソフィアは俺を呼び止めた。
「お姫様は早くパーティーに戻った方が――」
「オーブナー聞いて! 私、あの時の出来事に後悔しているの」
あの時も同じだった。騎士を辞めて逃げ出した俺をソフィアは止めた。それでも俺は言い訳をして逃げることを選択した。
別に騎士としての未練はない。目の前にいるソフィアを守ることができればそれでよかった。
だが、それも選択肢として間違えていたのだろう。結局は幼かった彼女を傷つけてしまった。
現実を彼女に分からせる必要がある。
「あなたと俺は殿下とただの騎士でした。それ以上でもそれ以下でもないです。もう何も関わりはないんです」
「ええ、それはわかっているわ」
「ならなんでそんな顔で俺を追いかけてくるんだよ」
ソフィアは目から涙を流している。彼女は俺を止めて後悔していると言っていた。ならそんな顔する必要はないはずだ。
「私が止めたことであなたをずっと傷つけていたのはわかっているわ。私の勝手な気持ちで縛りつけようとしていた」
確かにあの時のソフィアは俺に騎士としてずっと側に居てと言っていた。俺もそのつもりで命を捧げた。
だが、裏切り者の騎士が隣にいれば彼女は非難され続ける。
「俺達が一緒にいることはできないんだ」
それはお互いに君主と忠実な臣下以外の気持ちがあってもだ。
「だから私は止めたことを後悔したわ。だって、私があなたに付いていけばよかったのよ」
彼女は俺の手を握り、真剣な表情をしていた。
「ん? どういうことだ?」
彼女の言っていることが理解できない。
俺に騎士として残るように言ったのを後悔していると言っていた。それは俺を縛りつけるためだったということも理解している。
ん?
これは縛りつける以外にも方法があったと言っているのだろうか。
「ん? ちょっと待て。俺に付いていけばよかったって――」
「だからそのままの意味よ。別にあなたが騎士である必要はないじゃない! 私が王族から抜ければ良いことよ。ねぇ、簡単でしょ?」
いや、王族から抜けるってそんなに簡単なことじゃない。この無茶苦茶な感じはリックで慣れてきたと思っていたが、そうでもなかった。そもそも彼女は元から破天荒なタイプだ。
小さい頃は友達が出来たと言って、聖獣を紐でくくって引っ張ってくるぐらいだった。あの時は、見たこともない聖獣に城の中は大パニックになっていた。
「俺にも考える時間をくれ」
どう考えても解決案が出ないが、俺は彼女からもう離れることができないと確信した。きっと逃げ出しても、今の彼女なら追いかけてくるだろう。
どこかでしっかりと彼女と向き合う時間を作るのが必要だ。
「また今度会って――」
「誰かお兄ちゃんを助けて!」
聞き慣れた声が俺の耳に届いた。そういえば、リック達をパーティー会場に置いてきたことを忘れていた。
「今の声は――」
「たぶん、マリアちゃんの声よ!」
声が聞こえたのは俺だけではなかった。隣にいるソフィアも聞こえていた。
俺は魔力を広げてリックの位置を探る。森で一緒に薬草を採取する時のために覚えた魔法だ。
難易度も高いし、魔力消費量も多いがこれが一番リックを探しやすい。
「中央の庭園にいるぞ!」
俺は急いでリックがいる庭園に向かった。
「なら、私も一緒に行くわ」
「えっ?」
「いつまでも守ってもらう弱いソフィア殿下ではないからね」
彼女は魔法を使って体が浮いていた。
どうやら彼女の破天荒な性格は変わらないようだ。