「おい、ピシッと姿勢を正して立つんだ」
僕は今オーブナーに服の着替えを手伝ってもらっている。なぜか城で行われるパーティーに参加することになったのだ。
これは王族からの命令で、マリア達と作ったドレスは王族に頼まれた物だったらしい。そのお礼にパーティーに招待された。
それを聞いた公爵はウキウキしながら、煌びやかな服を準備していた。
ちなみにデザインは公爵と少し似ている。
どうしても一緒のような服が着たいと洋裁師に無理を言ったらしい。
ついでにモスス達の服も頼んだら、同じようなお揃いの服をすぐに作ってもらえた。僕達は同じ服に身を包んで、城に移動していく。
モスス達は他の人にバレないように鞄に入っている。
パーティー会場までは馬車で移動するが、先にマリアはアミリアと城に向かった。
残された公爵、コルック、オーブナー、そして僕の男性四人が馬車に乗っている。
緊張してガチガチだった僕も、公爵とコルックに撫でられたことで安心してきた。
パーティー会場に着くと、どの馬車からも次々と貴族が降りてくる。
全ての人が煌びやかな服に優雅な立ち姿。姿勢一つとっても僕との差は歴然。貴族の子ども達だって、しっかりとしている。
「リック大丈夫か?」
僕はオーブナーに手を引かれながら馬車から降りた。安心していても恐怖感で体が固まっていたのだろう。
オーブナーは今回のパーティーに行くことを頑なに断っていた。ただ、僕達の事情を考えて守れる人がいないといけないという理由で、髪型を変えて騎士の格好で変装している。
「騎士のオーブナーさんもかっこいいですね」
僕の言葉にオーブナーは優しく微笑んだ。見た目が変わっても、いつもと変わりない。
今回のパーティーは王位第一位継承権である殿下の子どもの誕生日らしい。
今後来ることもないため、美味しいものをたくさん食べて楽しむことにした。
僕はオーブナーと共に部屋の隅で楽しく会話をしていると少しざわざわとしている箇所があった。
ちょうど会場に中心部に人が集まっている。
「ああ、サゲスーム公爵家の子息だ。最近ミスリルをダンジョンから直接自分達で採ってきたと言っていたな」
確か僕がダンジョンに行った時に、貴族の冒険者は鉱石を持ち帰っていたはずだ。
あれは確かミスリルと言っていた気がする。
僕は少しだけ近づき、中心人物である人の顔を見に行く。
「あっ……」
僕が見間違えるわけがない。
その顔を見ただけで今すぐにあの時の記憶が蘇って来る。
どれだけあの時の出来事が脳裏に焼き付いているのだろうか。
「おい、リック大丈夫か?」
そんな僕に気づいたのか、オーブナーは駆け寄ってきた。
「顔色悪いし、震えているぞ」
やっぱり僕の中であの時の出来事が心の中に残っているようだ。オーブナーは優しく僕を抱きしめ、背中をゆっくり叩いてくれた。
「大丈夫だ。俺が一緒にいるからな」
オーブナーに優しく撫でられると、辛かった気持ちが少しずつ落ちついて来る。僕はそのままオーブナーの肩に顔を置く。
「ははは、無様な騎士風情が今頃貴族会に参加か?」
声に気づいたのか、すぐにオーブナーは僕を抱きかかえる。僕の背後からはあの貴族冒険者の声が聞こえる。
僕が息苦しくなっている時には、近づいてきたのだ。
「これはこれはお久しぶりです。次期サゲスーム公爵家様」
「ふん、俺のことは覚えているようだな」
声を聞くと改めて僕を囮にした冒険者で間違いないようだ。気にしないようにしていても震えが止まらない。
その様子に気づいているのか、どことなくオーブナーの声は怒っていた。
「顔をそのままつけていいぞ」
言われた通りに、肩に顔を置いて体を委ねる。僕に話しかける声はいつもの優しい声で少し安心した。
「ひょっとしたらそいつらが噂の子どもか? 顔を――」
「申し訳ありません。今緊張しているようなので、ここから連れ出そうとしていたところです」
貴族冒険者は僕の顔を見ようとするが、オーブナーは僕の頭を撫でて、顔を見えないようにする。
「まぁ、貴族の身分じゃない下民がこんなところに来るのは場違いだからな。ソフィア殿下もなぜこんなガキと騎士風情を呼んだのか――」
そう言って貴族冒険者は去って行った。あの人は常に悪口を言わないと気が済まないのだろうか。
「リック落ち着いたか?」
オーブナーの声に僕は頷く。体の震えも少しずつ治り、今は何も感じない。
下ろしてもらうときにチラッとオーブナーの顔が見えた。
「迷惑をかけてすみません」
「いや、大丈夫だ。これで誰かは特定できてよかったな」
オーブナーは優しく僕の頭を撫でて、元の場所に戻って行く。
――サゲスーム公爵家
それが僕を囮に使った貴族だ。
僕は今オーブナーに服の着替えを手伝ってもらっている。なぜか城で行われるパーティーに参加することになったのだ。
これは王族からの命令で、マリア達と作ったドレスは王族に頼まれた物だったらしい。そのお礼にパーティーに招待された。
それを聞いた公爵はウキウキしながら、煌びやかな服を準備していた。
ちなみにデザインは公爵と少し似ている。
どうしても一緒のような服が着たいと洋裁師に無理を言ったらしい。
ついでにモスス達の服も頼んだら、同じようなお揃いの服をすぐに作ってもらえた。僕達は同じ服に身を包んで、城に移動していく。
モスス達は他の人にバレないように鞄に入っている。
パーティー会場までは馬車で移動するが、先にマリアはアミリアと城に向かった。
残された公爵、コルック、オーブナー、そして僕の男性四人が馬車に乗っている。
緊張してガチガチだった僕も、公爵とコルックに撫でられたことで安心してきた。
パーティー会場に着くと、どの馬車からも次々と貴族が降りてくる。
全ての人が煌びやかな服に優雅な立ち姿。姿勢一つとっても僕との差は歴然。貴族の子ども達だって、しっかりとしている。
「リック大丈夫か?」
僕はオーブナーに手を引かれながら馬車から降りた。安心していても恐怖感で体が固まっていたのだろう。
オーブナーは今回のパーティーに行くことを頑なに断っていた。ただ、僕達の事情を考えて守れる人がいないといけないという理由で、髪型を変えて騎士の格好で変装している。
「騎士のオーブナーさんもかっこいいですね」
僕の言葉にオーブナーは優しく微笑んだ。見た目が変わっても、いつもと変わりない。
今回のパーティーは王位第一位継承権である殿下の子どもの誕生日らしい。
今後来ることもないため、美味しいものをたくさん食べて楽しむことにした。
僕はオーブナーと共に部屋の隅で楽しく会話をしていると少しざわざわとしている箇所があった。
ちょうど会場に中心部に人が集まっている。
「ああ、サゲスーム公爵家の子息だ。最近ミスリルをダンジョンから直接自分達で採ってきたと言っていたな」
確か僕がダンジョンに行った時に、貴族の冒険者は鉱石を持ち帰っていたはずだ。
あれは確かミスリルと言っていた気がする。
僕は少しだけ近づき、中心人物である人の顔を見に行く。
「あっ……」
僕が見間違えるわけがない。
その顔を見ただけで今すぐにあの時の記憶が蘇って来る。
どれだけあの時の出来事が脳裏に焼き付いているのだろうか。
「おい、リック大丈夫か?」
そんな僕に気づいたのか、オーブナーは駆け寄ってきた。
「顔色悪いし、震えているぞ」
やっぱり僕の中であの時の出来事が心の中に残っているようだ。オーブナーは優しく僕を抱きしめ、背中をゆっくり叩いてくれた。
「大丈夫だ。俺が一緒にいるからな」
オーブナーに優しく撫でられると、辛かった気持ちが少しずつ落ちついて来る。僕はそのままオーブナーの肩に顔を置く。
「ははは、無様な騎士風情が今頃貴族会に参加か?」
声に気づいたのか、すぐにオーブナーは僕を抱きかかえる。僕の背後からはあの貴族冒険者の声が聞こえる。
僕が息苦しくなっている時には、近づいてきたのだ。
「これはこれはお久しぶりです。次期サゲスーム公爵家様」
「ふん、俺のことは覚えているようだな」
声を聞くと改めて僕を囮にした冒険者で間違いないようだ。気にしないようにしていても震えが止まらない。
その様子に気づいているのか、どことなくオーブナーの声は怒っていた。
「顔をそのままつけていいぞ」
言われた通りに、肩に顔を置いて体を委ねる。僕に話しかける声はいつもの優しい声で少し安心した。
「ひょっとしたらそいつらが噂の子どもか? 顔を――」
「申し訳ありません。今緊張しているようなので、ここから連れ出そうとしていたところです」
貴族冒険者は僕の顔を見ようとするが、オーブナーは僕の頭を撫でて、顔を見えないようにする。
「まぁ、貴族の身分じゃない下民がこんなところに来るのは場違いだからな。ソフィア殿下もなぜこんなガキと騎士風情を呼んだのか――」
そう言って貴族冒険者は去って行った。あの人は常に悪口を言わないと気が済まないのだろうか。
「リック落ち着いたか?」
オーブナーの声に僕は頷く。体の震えも少しずつ治り、今は何も感じない。
下ろしてもらうときにチラッとオーブナーの顔が見えた。
「迷惑をかけてすみません」
「いや、大丈夫だ。これで誰かは特定できてよかったな」
オーブナーは優しく僕の頭を撫でて、元の場所に戻って行く。
――サゲスーム公爵家
それが僕を囮に使った貴族だ。