「マリアどうする?」

「私はお兄ちゃんの意見に合わせるよ。ただ、せっかく作ったハンカチーフを誰かに使ってもらえると嬉しいかな」

 僕達は王都に行くかの話し合いをしている。昨日オーブナーにハンカチーフを渡したら、王都に行かないかと誘われた。

 オーブナーは元々公爵家出身の騎士だったらしく、その伝手で僕達を庇護下に置けないかと考えているらしい。

 Aランク冒険者に命を狙われていることを考えると、王都に近づくことは避けた方が良いのだろう。

 ただ、マリアの希望も叶えたいのが正直なところだ。せっかく作ったハンカチーフを僕のせいで売らないってことはしたくない。

 僕に合わせると言いながらも、本当は王都に行きたいのだろう。

 いつまで生きられるかわからないが、初めて自分から何かをしたいと言ってきた。

 そのマリアの気持ちを僕は大事にしたいと思った。

「せっかくだから王都に行こう! マリアが作ったハンカチーフをみんなで売ろうよ」

「えっ? いいの?」

 僕が頷くとモススと毛玉もその意見には賛成のようだ。

 幸いオーブナーがある程度のことは対処してくれると言っていた。だから、僕達はそれに乗っかるだけだ。

 僕達は家族だ。

 誰かのためにみんなで協力するのが本当の家族。

 だから、家族のやりたいことは僕達のやりたいことだ。

 僕達は王都に行くことに決めた。





「おい、なんか子ども達が王都に行くって言っていたぞ?」

「ああ、俺もオーブナーから聞いた」

 俺はやっと癒しの存在を見つけた。いつも頭には魔物を乗せて、満面の笑みを周囲に振り撒いているそんな少年だ。

 そんな癒しがこの街を離れて王都に行くと言っていた。病気の妹のやりたいことを叶えてあげたいという理由らしい。

 あの小さな体で妹思いなのを知ると、さらに俺はリックに惹かれた。

 俺に愛を向けなくても良い。

 俺は頑張る男の子を応援したいのだ。

 だから、リックみたいな子は俺にとって癒しの存在だ。

 むしろ俺のことが好きだと言われたら幻滅してしまう。

 そもそも俺がこんなに頑張る男の子が好きになったのは、自分の才能のせいだ。

 昔からなんでもできた俺は何かに執着することもなく、頑張ったこともない。

 だからそういう子がいたら、今も心のどこかで憧れているのだろう。

「それでショタッコンはどうするんだ?」

「はぁん? そんなの聞かなくてもわかるだろ」

「ああ、俺達は――」

「天使様に付いて行く!」
「リックに付いて行く!」

 ロンリーコンと言葉が重なったようだ。Sランク冒険者になったら特にやることもない。

 金や強さはもういらない。

 あとは己の欲求を満たしてくれる存在を、ただひたすらと応援するだけだ。

 どうせオーブナーも付いて行くことになるだろうから、人が多い方が楽しいだろう。

「じゃあ、俺は今日もリックの観察に行ってくる」

「ああ、俺も天使様と仲良くなってくるわ」

 俺達の人生にはまだまだ魅力的な世界が待っている。