猫と会ってから数日が経った。モススも薬草を与えたことで少し元気になっている。今では僕の頭の上にいる時間の方が増えてきた。
今日は謎の白い物体を糸にする日だ。この間薬草のお礼に白くて丸い謎の物体をモススからもらった。その時に必死に編み物と何かを丸めるジェスチャーをしていた。
マリアに渡すと、編み物の糸にできるのではないかという話になった。
謎の白い物体はどこか殻のように表面は硬く、叩いても割れるような感じはしない。
一度水につけて、柔らかくなるか確認すると少しずつ柔らかくなった。だが糸にはならないようだ。
そこでオーブナーに相談すると、お湯ならどうなるか検証することになった。
「これで糸になるのかな?」
半信半疑になりながらも、大きな鍋に転がしながらお湯にしばらくつける。
何度も転がすと、自然に柔らかくなり糸のようなものが飛び出てきた。
「お兄ちゃんこれを巻けば糸になるんじゃない?」
糸が熱くて巻けないため、マリアは糸を冷やしながら引っ張っていく。
『キュ!』
その隣ではずっとモススが手をぐるぐる回すジェスチャーをしている。
「ぐるぐる、ぐるぐる楽しいな!」
僕達はモススをマネするように、糸をぐるぐるしていく。
「ぐるぐる、ぐるぐる楽しいな!」
歌いながらやるともっと楽しくなる。気づいたら、糸は塊になり糸玉ができていた。
謎の白い塊が何かはわからないが、モススも糸をプレゼントしたかったのだろう。
僕はお礼にモススをモスモスすると嬉しそうにしていた。
♢
俺は明らかにおかしなハンカチーフを目の前にして驚いている。
「これって何の糸なんだ? この間取ってきた魔物の糸ではないよな?」
白く光沢があり、触り心地はさらさらとしている。カイコから作られる布に似ているが、どう考えても糸一本ずつの輝きが違う。
触り心地も今まで触ってきた布と全く別物だ。
「モススが持ってきてくれたやつで作ったよ」
リックの隣でモススは手を上げている。モススとはリックのテイムしているカイコの名前だ。
きっとこのハンカチーフの糸はモススの繭からできた糸なんだろう。
リックはなぜかモススをフェンリルと言っていた。
フェンリルって伝説の聖獣だからな。リックの中でそれだけモススが大事な存在なんだろう。
だがここまで有能だと本当にフェンリルだと思ってしまう。
「オーブナーさん、これって売れますか?」
公爵家出身の俺でも見たことないハンカチーフに、一瞬にして高値がつくと判断できるぐらいだ。
俺が頷くとマリアは嬉しそうに笑っていた。今まで兄に頼ってきたからか、力になることがあって嬉しいのだろう。
ただ、問題なのはこのハンカチーフを世に出しても良いのかということだ。
詳しい話は聞いてないが、リック達は貴族に命を狙われていると聞いている。そんなリック達がこれを売ることで目立つ可能性がある。
母親である現公爵夫人があのハンカチーフをお茶会で使ったら、一瞬にして貴族会で流行るのは間違いない。
生産数に限りがある物だからこそ、もっと高値がつく。
リック達の願いは叶えたいが、それと同時に彼らを危険に晒す。考えてもあまりいいことはないため、本人達に聞くのが一番早いだろう。
「お前達王都に行く気はないか?」
「王都ですか!?」
「このハンカチーフを巡ってお前達の存在が貴族たちに知られるだろう。だから公爵家である俺の家に来てみないか?」
王都に行って直接公爵家の庇護下におけば、少しは命が狙われる可能性も低くなる。
「えっ、オーブナーさん貴族なんですか!?」
「由緒ある公爵家だな」
「うえええええ!?」
リック達の声が響くほど驚いていた。モススと毛玉も俺から見てもわかるほど驚いてる。
俺とは真逆で本当に感情豊かにみんな育っている。
「とりあえず、このハンカチーフを売るなら王都に行くことも考えておくと良い。リックとマリアの問題も王都ならどうにかなるかもしれないからな」
どちらにせよ、ずっとコソコソと生きるのは難しいだろう。リックも冒険者として異様な強さを持っているからな。
スパイダー種の上位種である、デススパイダーを撫で回して懐かせるぐらいだ。
出会ったら逃げる前に殺される。それがデススパイダーと言われる理由だ。やつは小さい体を活かして、素早く攻撃してくるのが特徴的だ。
そんなデススパイダーを猫と言って、撫でている時は夢でも見ているのかと思った。
きっとリックは将来SSSランクの冒険者になるかもしれないな。
俺もいつのまにかリック達に魅了されたようだ。
今日は謎の白い物体を糸にする日だ。この間薬草のお礼に白くて丸い謎の物体をモススからもらった。その時に必死に編み物と何かを丸めるジェスチャーをしていた。
マリアに渡すと、編み物の糸にできるのではないかという話になった。
謎の白い物体はどこか殻のように表面は硬く、叩いても割れるような感じはしない。
一度水につけて、柔らかくなるか確認すると少しずつ柔らかくなった。だが糸にはならないようだ。
そこでオーブナーに相談すると、お湯ならどうなるか検証することになった。
「これで糸になるのかな?」
半信半疑になりながらも、大きな鍋に転がしながらお湯にしばらくつける。
何度も転がすと、自然に柔らかくなり糸のようなものが飛び出てきた。
「お兄ちゃんこれを巻けば糸になるんじゃない?」
糸が熱くて巻けないため、マリアは糸を冷やしながら引っ張っていく。
『キュ!』
その隣ではずっとモススが手をぐるぐる回すジェスチャーをしている。
「ぐるぐる、ぐるぐる楽しいな!」
僕達はモススをマネするように、糸をぐるぐるしていく。
「ぐるぐる、ぐるぐる楽しいな!」
歌いながらやるともっと楽しくなる。気づいたら、糸は塊になり糸玉ができていた。
謎の白い塊が何かはわからないが、モススも糸をプレゼントしたかったのだろう。
僕はお礼にモススをモスモスすると嬉しそうにしていた。
♢
俺は明らかにおかしなハンカチーフを目の前にして驚いている。
「これって何の糸なんだ? この間取ってきた魔物の糸ではないよな?」
白く光沢があり、触り心地はさらさらとしている。カイコから作られる布に似ているが、どう考えても糸一本ずつの輝きが違う。
触り心地も今まで触ってきた布と全く別物だ。
「モススが持ってきてくれたやつで作ったよ」
リックの隣でモススは手を上げている。モススとはリックのテイムしているカイコの名前だ。
きっとこのハンカチーフの糸はモススの繭からできた糸なんだろう。
リックはなぜかモススをフェンリルと言っていた。
フェンリルって伝説の聖獣だからな。リックの中でそれだけモススが大事な存在なんだろう。
だがここまで有能だと本当にフェンリルだと思ってしまう。
「オーブナーさん、これって売れますか?」
公爵家出身の俺でも見たことないハンカチーフに、一瞬にして高値がつくと判断できるぐらいだ。
俺が頷くとマリアは嬉しそうに笑っていた。今まで兄に頼ってきたからか、力になることがあって嬉しいのだろう。
ただ、問題なのはこのハンカチーフを世に出しても良いのかということだ。
詳しい話は聞いてないが、リック達は貴族に命を狙われていると聞いている。そんなリック達がこれを売ることで目立つ可能性がある。
母親である現公爵夫人があのハンカチーフをお茶会で使ったら、一瞬にして貴族会で流行るのは間違いない。
生産数に限りがある物だからこそ、もっと高値がつく。
リック達の願いは叶えたいが、それと同時に彼らを危険に晒す。考えてもあまりいいことはないため、本人達に聞くのが一番早いだろう。
「お前達王都に行く気はないか?」
「王都ですか!?」
「このハンカチーフを巡ってお前達の存在が貴族たちに知られるだろう。だから公爵家である俺の家に来てみないか?」
王都に行って直接公爵家の庇護下におけば、少しは命が狙われる可能性も低くなる。
「えっ、オーブナーさん貴族なんですか!?」
「由緒ある公爵家だな」
「うえええええ!?」
リック達の声が響くほど驚いていた。モススと毛玉も俺から見てもわかるほど驚いてる。
俺とは真逆で本当に感情豊かにみんな育っている。
「とりあえず、このハンカチーフを売るなら王都に行くことも考えておくと良い。リックとマリアの問題も王都ならどうにかなるかもしれないからな」
どちらにせよ、ずっとコソコソと生きるのは難しいだろう。リックも冒険者として異様な強さを持っているからな。
スパイダー種の上位種である、デススパイダーを撫で回して懐かせるぐらいだ。
出会ったら逃げる前に殺される。それがデススパイダーと言われる理由だ。やつは小さい体を活かして、素早く攻撃してくるのが特徴的だ。
そんなデススパイダーを猫と言って、撫でている時は夢でも見ているのかと思った。
きっとリックは将来SSSランクの冒険者になるかもしれないな。
俺もいつのまにかリック達に魅了されたようだ。