書いてもらった地図通りにギルドスタッフに教えてもらった武器屋に向かう。この街は道が入り組んでいるのか、中々地図通りには進まない。
「こっちで合ってるのかな?」
『キュ、キュキュ!』
僕が変な道に入るとモススが髪の毛を引っ張って、行き先を教えてくれる。
「ここが武器屋なのか?」
店の前には看板はなく、どこか不気味な外観に入るのを戸惑ってしまう。それでも頭の上にいるモススが髪の毛を引っ張っているから、ここが武器屋で合っているのだろう。
ゆっくりと扉を開けると、中にはたくさんの武器が展示されていた。ただ、店舗内は暗く人がいる様子もない。
「ヒヒヒィ、武器をお求めかい?」
突然聞こえてきた声に僕は固まってしまった。部屋には僕達以外に誰もいない。
僕は魔物の中でもレイスと呼ばれる存在、はっきりとしていないものが嫌いだ。
以前レイスの討伐依頼でパーティーの荷物持ちとして行ったが、あまりにも不気味すぎて漏らしたのを覚えている。
「ムリムリムリィー!」
僕は店から出ようとするが、なぜか扉が開かなかった。魔法が得意なレイスが何かしら扉に細工をしたのだろう。
「ヒヒヒ、それは引き戸だよ」
何か言っていたが、焦っている僕には聞こえない。
そんな逃げ腰の僕にモススは早く戦えと言わんばかりに、髪の毛を引っ張ってくる。そのまま引っ張り過ぎると、おじさんになる前にハゲになってしまう。
「食べるなら丸呑みでお願いします」
僕がその場で座り込むとレイスはなぜか笑っていた。
「ヒヒヒ、そんなに驚かなくても食ったりせんよ」
よく見るとカウンターから人の頭頂部のようなものが出ている。
僕はゆっくりと立ち上がった。警戒しつつ近づくと、カウンターの下からひょっこりと顔を出すお婆さんがいた。
どうやら身長が低くて、入り口から見えないようだ。
「驚いてすみません」
「ヒヒヒ、よく言われているから気にしなさんな」
背丈は僕と同じぐらいで、体格的にきっとドワーフなんだろう。
「そんなにキラキラした目で見られても困るわ!」
どうやら興味津々なのがバレてしまったようだ。初めてドワーフを見たが、実在するとは思いもしなかった。
手先が器用で酒好きのドワーフは、武器や防具の他に日用品を作っていたりする。鉱山が多い土地に住んでいることが多いため、こんな普通の街にいるとは誰も思わないだろう。
「武器のレンタルをしたいんですが、ここで合ってますか?」
「武器のレンタルか?」
武器屋の店主は僕を見て少し考えているようだ。やはりお金がなさそうな見た目だと、レンタルもさせてもらえないのかもしれない。
お店に入った時に思ったのは、どれも値段が高く、武器はそれぞれの種類で数点しか取り扱っていなかった。
剣が三本、斧が二本、槍が二本と武器が厳選されているように感じた。
「普段は何を使っているんだ?」
「あー、今まで戦ったことがないんです」
僕の言葉に店主は大きなため息を吐いていた。戦うスキルがない僕が、武器を持つことをあまりよく思っていないのだろう。
現に僕は戦う気もないため、武器というよりは何かあった時の自衛手段ができれば問題はない。
急に剣や弓なんてもらったら、ただの宝の持ち腐れになってしまう。
「きっとテイマーなら鞭がオススメ――」
「鞭は嫌です! 家族のモススに命令なんかしたくないです」
一般的にテイマーは鞭を使って魔物を操るスキルだ。一方、召喚士は魔力で魔物を操るため杖を使っている。どちらも魔物を操るという点では同じだ。
だが、僕はモススを家族だと思っている。それに頭が良いフェンリルに命令するなんて無礼だと思われてしまう。
僕の気持ちが伝わったのか、モススは頭の上でお腹を擦り付けていた。そんなモススの頭を撫でると気持ち良さそうにうっとりしている。
「ヒヒヒィ、そんなに仲が良いならこういうのがオススメだね」
店主が持ってきたのは、先端にたくさんの鳥の羽のような物がついた短杖だ。見た目は掃除をする時のホウキに近い。杖なら召喚士ではないガチャテイマーの僕に必要ない。
ここはしっかりと断って、短剣をレンタルしたいと言った方が良さそうだ。
「できれば短剣が――」
「これは魔力を通すと、先端の毛の硬さが変わる少し変わった杖なんだ」
杖を握ると毛は少し硬くなったのか、杖を振っても毛はふさふさとせずに固定されている。どうやら魔力に反応する素材で作っており、そのまま魔力を高めると攻撃手段にもなるらしい。
だが、この杖の良さはそこではなかった。
「こうやって程よい硬さであれば、そやつの毛繕いもできるぞ」
僕は短杖を受け取ると、少し体の中の何かが短杖に奪われているようだ。これが魔力を使うってことなんだろう。
意識してたくさん魔力を流せば、先端の羽は刃物のようになり、少しだけ通すと程よく硬い羽だ。
小さい時に見た本に載っている魔女が使っていたホウキにどこか似ている。あの当時は本があんなに高いとは知らなかったな。
「モスス試してみるか?」
僕はモススに聞くと、嬉しそうにテーブルに降りてきた。体に沿わせるように短剣の羽を押し当てると、少しずつ頭からお尻に向けて動かす。
『キュ……キュー!』
気持ち良いのか体をブルブルと震わせている。一度手を止めると、足りないのか体を自分で短剣に擦り付けていた。
「可愛い……」
僕はモススにメロメロだ。モスモスするだけで今まで満足していたが、毛繕いに魅了されてしまったようだ。
今もお腹を見せてねだっている。
何度も何度もモススの毛を整えると、モススは満足そうに羽をバタバタと羽ばたいている。
【スキル:毛繕いを覚えました】
「へっ?」
脳内で突然聞こえる声に僕は驚いてしまった。
どうやら僕は新しいスキルを手に入れたようだ。
「こっちで合ってるのかな?」
『キュ、キュキュ!』
僕が変な道に入るとモススが髪の毛を引っ張って、行き先を教えてくれる。
「ここが武器屋なのか?」
店の前には看板はなく、どこか不気味な外観に入るのを戸惑ってしまう。それでも頭の上にいるモススが髪の毛を引っ張っているから、ここが武器屋で合っているのだろう。
ゆっくりと扉を開けると、中にはたくさんの武器が展示されていた。ただ、店舗内は暗く人がいる様子もない。
「ヒヒヒィ、武器をお求めかい?」
突然聞こえてきた声に僕は固まってしまった。部屋には僕達以外に誰もいない。
僕は魔物の中でもレイスと呼ばれる存在、はっきりとしていないものが嫌いだ。
以前レイスの討伐依頼でパーティーの荷物持ちとして行ったが、あまりにも不気味すぎて漏らしたのを覚えている。
「ムリムリムリィー!」
僕は店から出ようとするが、なぜか扉が開かなかった。魔法が得意なレイスが何かしら扉に細工をしたのだろう。
「ヒヒヒ、それは引き戸だよ」
何か言っていたが、焦っている僕には聞こえない。
そんな逃げ腰の僕にモススは早く戦えと言わんばかりに、髪の毛を引っ張ってくる。そのまま引っ張り過ぎると、おじさんになる前にハゲになってしまう。
「食べるなら丸呑みでお願いします」
僕がその場で座り込むとレイスはなぜか笑っていた。
「ヒヒヒ、そんなに驚かなくても食ったりせんよ」
よく見るとカウンターから人の頭頂部のようなものが出ている。
僕はゆっくりと立ち上がった。警戒しつつ近づくと、カウンターの下からひょっこりと顔を出すお婆さんがいた。
どうやら身長が低くて、入り口から見えないようだ。
「驚いてすみません」
「ヒヒヒ、よく言われているから気にしなさんな」
背丈は僕と同じぐらいで、体格的にきっとドワーフなんだろう。
「そんなにキラキラした目で見られても困るわ!」
どうやら興味津々なのがバレてしまったようだ。初めてドワーフを見たが、実在するとは思いもしなかった。
手先が器用で酒好きのドワーフは、武器や防具の他に日用品を作っていたりする。鉱山が多い土地に住んでいることが多いため、こんな普通の街にいるとは誰も思わないだろう。
「武器のレンタルをしたいんですが、ここで合ってますか?」
「武器のレンタルか?」
武器屋の店主は僕を見て少し考えているようだ。やはりお金がなさそうな見た目だと、レンタルもさせてもらえないのかもしれない。
お店に入った時に思ったのは、どれも値段が高く、武器はそれぞれの種類で数点しか取り扱っていなかった。
剣が三本、斧が二本、槍が二本と武器が厳選されているように感じた。
「普段は何を使っているんだ?」
「あー、今まで戦ったことがないんです」
僕の言葉に店主は大きなため息を吐いていた。戦うスキルがない僕が、武器を持つことをあまりよく思っていないのだろう。
現に僕は戦う気もないため、武器というよりは何かあった時の自衛手段ができれば問題はない。
急に剣や弓なんてもらったら、ただの宝の持ち腐れになってしまう。
「きっとテイマーなら鞭がオススメ――」
「鞭は嫌です! 家族のモススに命令なんかしたくないです」
一般的にテイマーは鞭を使って魔物を操るスキルだ。一方、召喚士は魔力で魔物を操るため杖を使っている。どちらも魔物を操るという点では同じだ。
だが、僕はモススを家族だと思っている。それに頭が良いフェンリルに命令するなんて無礼だと思われてしまう。
僕の気持ちが伝わったのか、モススは頭の上でお腹を擦り付けていた。そんなモススの頭を撫でると気持ち良さそうにうっとりしている。
「ヒヒヒィ、そんなに仲が良いならこういうのがオススメだね」
店主が持ってきたのは、先端にたくさんの鳥の羽のような物がついた短杖だ。見た目は掃除をする時のホウキに近い。杖なら召喚士ではないガチャテイマーの僕に必要ない。
ここはしっかりと断って、短剣をレンタルしたいと言った方が良さそうだ。
「できれば短剣が――」
「これは魔力を通すと、先端の毛の硬さが変わる少し変わった杖なんだ」
杖を握ると毛は少し硬くなったのか、杖を振っても毛はふさふさとせずに固定されている。どうやら魔力に反応する素材で作っており、そのまま魔力を高めると攻撃手段にもなるらしい。
だが、この杖の良さはそこではなかった。
「こうやって程よい硬さであれば、そやつの毛繕いもできるぞ」
僕は短杖を受け取ると、少し体の中の何かが短杖に奪われているようだ。これが魔力を使うってことなんだろう。
意識してたくさん魔力を流せば、先端の羽は刃物のようになり、少しだけ通すと程よく硬い羽だ。
小さい時に見た本に載っている魔女が使っていたホウキにどこか似ている。あの当時は本があんなに高いとは知らなかったな。
「モスス試してみるか?」
僕はモススに聞くと、嬉しそうにテーブルに降りてきた。体に沿わせるように短剣の羽を押し当てると、少しずつ頭からお尻に向けて動かす。
『キュ……キュー!』
気持ち良いのか体をブルブルと震わせている。一度手を止めると、足りないのか体を自分で短剣に擦り付けていた。
「可愛い……」
僕はモススにメロメロだ。モスモスするだけで今まで満足していたが、毛繕いに魅了されてしまったようだ。
今もお腹を見せてねだっている。
何度も何度もモススの毛を整えると、モススは満足そうに羽をバタバタと羽ばたいている。
【スキル:毛繕いを覚えました】
「へっ?」
脳内で突然聞こえる声に僕は驚いてしまった。
どうやら僕は新しいスキルを手に入れたようだ。