俺は他の男と比べて良い人生を過ごしている。強い能力とみんなが見惚れるほどの容姿で今も女には困ってはいない。

「あん、マリベルだけズルい!」

「そんなこと言うなよ。シャルロもこっちに来いよ」

「やった! アテナも恥ずかしがってないでこっちに来なよ」

「わわわ、私は――」

 俺はアテナに口づけをしながら服を脱がしていく。この女達は俺の才能に惚れ込んで付いてきた奴らだ。毎日どこに行っても一緒で三人の相手を同時にするのは疲れるがそれもモテる男の宿命だ。

「ねぇ、メルロはいいの?」

「ああ、あいつか。俺に興味がないやつはいらないわ。それより三人で気持ち良くしてくれ」

 ウォーレンの代わりに入れたアイテムボックス持ちのメルロはとにかく見た目が最高だった。

 だから声をかけたのに俺の才能には全く興味がないのか近寄ってこない。

 勇者になった俺が声をかけたら股を開いて寄ってくると思ったが、あいつは力を欲していたわけではないようだ。

 今の俺には一人の女より三人の女と楽しんだ方がいいからな。外にいるメルロに聞こえるように、声が漏れ出るほど俺達は楽しんだ。

 きっと女なら艶やかな声を聞いたら体が疼いて仕方ないだろう。





 朝起きると外は騒がしくなっていた。どうやら女性同士で言い合いをしているようだ。

「おい、どうしたんだ?」

「だから言ったじゃない。アイテムボックスは限度があるって」

 昨日俺達があんなに激しい夜を過ごしたからなのか、メルロは朝から文句を言っていた。そんなに俺のことを取り合いしたいなら混ざってこれば良いものを……。

「お前も混ざれば――」

 声をかけるとメルロは俺を蔑む目で見ていた。どこかその瞳にも背筋がゾクゾクとして朝から元気になりそうだ。

 話を聞いているとどうやら荷物が収納できないらしい。アイテムボックス持ちが収納できないとはどういうことだろうか。

 アイテムボックスといえばなんでも入れられる、ポーターの中では最上位のスキルだ。お金しか持っていないあいつとは違う。

「そもそも私はお金が持てれば良いと言われてパーティーに誘われたわ」

 確かに俺はメルロにそう言って声をかけたが、アイテムボックス持ちなら荷物を持ってもらうのが当たり前だ。

「お金が少ない今なら荷物は持てるだろ?」

 今俺達が稼いだ金は大白金貨2枚ほどだ。勇者パーティーになると、今までとは比べ物にならないぐらい稼ぎが良い。どんどん金の方から舞い込んでくる。

「大白金貨がどれぐらいの重さか知ってて言ってるのかしら? ここにある荷物と同じ質量よ」

 指差ししていたのは俺達五人分のテントと食料だった。

 確かに行きは荷物が全て入ったが、大白金貨になれば質量はあるが大きさはそこまで大きいわけではないから問題ないはずだ。

「ポーターは基本的にサイズじゃなくて質量で荷物の量が決まっているのよ。勇者なのにそんなこともわからないのかしら」

 俺は何を言っているのかわからなかった。あの男は荷物が収納できないが、どれだけでも大白金を収納できていた。

 お金の管理はいつもあいつがやっていたから、俺はそんなことを知らない。むしろ知る気もなかった。

「メルロちゃんは何を言ってるの? 持てない分あなたが持てばいいのよ?」

「脳まであいつと一緒で腐ってるようね」

「ポーターの分際で!」

「これでも冒険者として戦う実力はあるわよ。私に挑む気かしら?」

 女性達は今にも戦いそうになっていた。まさかメルロが戦えるとは俺も知らない。俺は間に入って戦う前に止める。

「おいおい、流石に女性に対してそんなことはさせられないだろう」

 入らない物を一人に持たせることは流石に俺もできなかった。だって食料に関してもかなりの量がある。

「だってあいつはそれぐらい普通に持って歩いてたわ?」

 聖女のスキルを持っているシャルロはお嬢様育ちで俺に一目惚れして冒険者になった女だ。俺がメルロに好意があるのを知っているのか、何かある度にメルロに噛みついていた。

「あんた達がこんなに荷物を持って来なければ済むものよ。そもそも自分の荷物は自分で運んで、お金はもらった地域で使うのが冒険者としての当たり前よ」

 確かにメルロが言うことは冒険者の中では当たり前のことだ。ただ、俺達は勇者パーティーなのだ。その分一回に稼ぐお金の量が違う。

「そもそもいくつも討伐依頼を受けるのが間違いよ」

 そんなことを言っても俺達はそれが当たり前だったのだ。

「こんなことならあいつを辞めさせなければよかったわね。金もいらないしなんでも言うこと聞いてくれるから便利だったわ」

 魔女のマリベルはウォーレンの話を出してきた。そもそも俺以外の男の話が出るのもパーティーにいるのも気に食わなかった。

 俺はあいつが何もできないくせに、みんなから評価されるのが昔から許せない。俺の故郷でも俺よりあいつの話ばかりだ。

「黙れ! 俺が運ぶから何も話すな」

 いらないテントと最低限の食料以外は捨てて、俺はメルロから荷物を奪い背負った。あいつの存在が無ければ俺はこんな気持ちにならなかったはずだ。

「またメルロだけ……私のアドルを……絶対許さないわ」

 シャルロは何かを言っていたが、俺はあいつにイラつき話を聞いていなかった。

「ははは、ウォーレン。俺から逃げられると思うなよ」

 街に戻ったらあいつが生きていたのを後悔するぐらい痛めつけることを考えていると、自然と背負っている荷物が軽く感じた。