俺はロンを助けるためにリザードマンの方へ駆け寄った。硬い鱗が特徴と聞いていたが思っていたより鱗は柔らかかった。

 俺の中でも1番硬かったのは金剛の守護者ゴーレムだったからな。

 俺は匠の外套でリザードマンを倒しながら近づくとロンも数が多いリザードマンと距離を取りながら戦っていた。

「大丈夫か?」

「どうにかなってるよー」
 どうやら心配はいらないようだ。ロンは1人でリザードマンを複数相手していた。

 そのため俺はロンが倒したリザードマンから魔石を取り出すことにした。そういえば俺って以前からも魔石や薬草の回収役なのは変わらない。

「リザードマンは水色の魔石か」
 リザードマンから出てきたのはサハギンよりも薄く澄んだ水色の魔石だった。色からして水属性のスキル玉の材料になるだろう。

 それにしてもロンがフードを外している影響からか沼からどんどんリザードマンが溢れ出ているのだ。

 1匹リザードマンがいたら100匹いると思えって言われているのが実感できるほどだった。

「ロンー! 気が済んだらほどほどにしとけよ」
 俺はロンに声をかけると外套のフードを被り戻ってきた。するとリザードマン達は辺りをキョロキョロしながらロンの姿を見失ったのか沼の中へ帰って行った。

 すでにリザードマンの魔石だけでも30個以上は回収できているため、利益としては十分だろう。俺も討伐証拠としてリザードマンの体の一部を剥ぎ取った。

「私の方も終わったよ」
 ニアも採取が終わったのかどこか毒々しい草や花を持ってきていた。最近は以前モーリンに教えてもらった調合にハマっているらしい。

 そんな花と草をどこで使うのか俺は心配で仕方ない。大きな赤い花の真ん中に歯みたいなのが生えおり開いたり閉じたりしているのだ。

 俺達はリザードマンの討伐依頼を終えると冒険者ギルドに帰ることにした。





「依頼の報告と魔石の買取をお願いします」
 俺は冒険者ギルドに討伐報告と魔石の買取を依頼した。

 今まではポーターということもあり、買取をしなかったがこのギルドにはリーチェの姉であるルーチェとローガンがいるため信用できるのだ。

「まずは討伐証明の爪をお願いします」
 リザードマンの討伐証明はリザードマンの爪だ。俺は30個以上の爪を出すと疑問でもあるのか首を傾けていた。

「わざわざ全部剥いできたんですか?」
 基本的に討伐証明は魔物の中でわかりやすい部位を証明として提出することなっている。リザードマンであればなぜか1本だけ発達しているため爪が討伐証明なのだ。

「どういうことですか?」

「だって全部同じ大きさですし、そんなにリザードマンはいないですからね」
 ルーチェはそう言いながらもスキル玉で確認していた。

「えっ……まさか……これも?」
 姉妹だからなのかリーチェと同じでスキルを使いながら独り言を言っていた。

「ウォーレンくんすみませんでした。 これ全て違う個体の討伐証明なんですね」
 どうやらルーチェは同じ大きさの爪を出されたため、討伐証明以外の部位の指から剥いだ爪を出したのかと思ったらしい。

 横暴な冒険者が受付嬢を欺く手法で持ってくる冒険者がたまにいるらしい。実際にリザードマンをこんなに狩ってくる人がいないのも勘違いの原因だろう。

 その後も魔石の買取を依頼していたが、魔石に驚きルーチェはローガンを呼びに行っていた。その時、突然冒険者ギルドの扉が開いた。

「おい、誰か助けてくれ!」
 大柄な冒険者に抱え込まれたのは血だらけの冒険者だった。しかも、怪我をしているのは1人だけではなく3人も来たのだ。

「今ポーションを持ってくるから教会に回復魔法持ちを依頼してくれ!」
 奥から来たローガンは迅速に冒険者の治療に当たっていた。

「腹に穴が空いてるからはやくしてくれ」
 冒険者が抱えていた男性はぐったりしており腹に穴が空いていた。

「これだとポーションだけじゃどうしようもないぞ」
 ローガンからはいつもの女性?らしさは無くなっていた。

「回復魔法で大丈夫ですか?」
 あまり勝手な行動をしてはいけないと思い立ち尽くしていたがその前にニアが動いていた。

「大丈夫なのか?」
 ローガンは事前にニアがスキルを持っていないことを知っていた。それは貴重なスキル玉を使うことを意味していた。

 実際は俺達スキル玉製造機ってぐらいメジストに魔石を提供しているからな。回復魔法のスキル玉をいくつか持っていた。

「そのための回復魔法ですよ」
 そう言ってニアは冒険者に回復魔法を使い、俺は同時に怪我をした冒険者の治療をあたることにした。