「では、また機会があったら#ゴールド__・__#商会をお願いします」
 俺達はその後も問題なく王都に戻り護衛依頼を終えた。

 あれからエヴァンも落ち着き、普段から頭がおかしい状態が通常になっていた。

「おい、ウォーレン!」

「おっおう、なんだ!」
 ついにエヴァンは俺のことを名前で呼ぶようになっていた。

「また俺様とパーティー組め!」

「お前が真面目になったらな」
 別に嫌ではないがパーティーを組むと匠の短剣が使えないから収入が減ってしまう。しかも、まだ命令口調なのは変わらないようだ。

「はぁん? お前に言われなくても俺は真面目だよ」

「ああ、そうか。 ぷっ──」

「あははは」
 俺とエヴァンは吹き出して笑っていた。短期間のパーティーだったけど次第にエヴァン達には俺も心を開いていた。

 ロンとニアもプリシラにはべったりとくっついているからな。

 今まで俺にはアドルしか友達がいなかった。しかし、今回の依頼を通して友達や仲間という存在の大事さを改めて感じることができた。ただ、その相手がエヴァンだったというのがどこか気に食わないがな。

 俺達は冒険者ギルドに行くとローガンが受け付けにいた。

「みんなおかえりなさい! 依頼に関してはゴードンさんから達成の話を聞いているわ」
 冒険者ギルドで終わったことを報告することで依頼は完了される。

「じゃあ、早速だけどランクを発表するわ」
 俺は急なランクの発表に胸がドキドキとしていた。

 冒険者ランクはEからSの6段階あり、Eから始まるがそもそもポーターだったためランクEにもなれなかったのだ。

「君達はCランクになりました!」

「……」

「おーい! ウォーレンちゃん? そのままだと私が抱きつい──」

「はぁ!? えー!」
 俺は驚きのあまり声が出なくなっていた。そんな中ローガンがよからぬことを言いだしそうになっていたため急いで息を吐いた。

 ちなみに一人前と言われているのはCランクからだ。
 まさかポーターの俺達が急に一人前の判定を貰えるとは思ってもみなかった。

「ちなみにポーターで冒険者ランクをもらった人物は過去にはいないからウォーレンちゃん達が初めてよ」
 どうやら俺達は初めてのランク持ちポーターになった。

「にいちゃよかったね」
「お兄ちゃん頑張ってたもんね」

「ああ、そうだな」

「あらあら、似たもの同士なのね……」
 俺は知らないうちに涙が溢れ出ていた。ああ、叶えることができないと思っていた夢の勇者に自分の力で近づいたんだと思った。

 しかし、隣を見るとエヴァンも泣いていた。ああ、忘れていたがエヴァンも涙脆いやつだった。

「おーい、あんた達! 今日も準備できてるわよね?」

「ウェーイ!」
 あっ、この雰囲気はまさかまたあの展開ですか……。

「私らの仲間ウォーレンちゃん達が冒険者ランクを手に入れたわ。 こんな日に──」

「飲まない理由はなーい!!」
 気づいたらテーブルは片付けられていた。俺とエヴァンはローガンに抱えられそのまま椅子に座らされた。

 ああ、今日も飲み会になってしまった。





「無事帰りました」

「ああ、おかえり。 依頼はどうだったんだい?」
 回復薬を作っている作業中にロビンが帰ってきた。今回もウォーレン達を影から追っていたのだ。

「依頼は何事もなく終わりました」

「依頼は?」

「僕達が思っているより全てが良い方向に終わりましたよ」
 ロビンの一言に私は胸を撫で下ろした。貴族の中でさらに1番上である王族と関わって問題がなければとりあえずは問題ない。

「ウォーレンとエヴァン達はどうだったんだ?」

「そりゃーもう行く前から殴り合いの大喧嘩でしたよ」
 話を聞いて私は驚いてしまった。あの優しいウォーレンが殴り合いの喧嘩をするとは思いもしなかった。

 その後もお互い当たることはあっても最後には問題が解決して理解し合える存在になれたと聞いてやっと私達の仕事が終わったと思った。

「これで私達の役目も終わりだね」
 冒険者ランクも貰い一人前になったウォーレン達に私達の手助けはいらないはずだ。

「ひょっとして──」

「ああ、私達はもう帰ろうと思ってね。 もう孫の成長も見れたからね?」
 私はメジストとともに孫達から離れるタイミングを事前に話していた。それが冒険者として一人前になった時だった。

「あんたもそんなとこで聞いてないで中に入りなさいよ」

「わしはまだロンとニアと遊ぶのじゃ」
 メジストは扉の奥で寂しそうな顔をしていた。きっとあの人も離れがたいのだろう。

 だけどいつかは子達が旅立っていくのを保護者の私達が一緒にくっついて見続けるわけにはいかないのだ。

「ほらほら、またあんたはすぐに泣く」

「わしはまだ泣いておらんぞ……」
 私は優しくメジストを抱きしめた。いつになっても泣き虫メジストは変わらないようだ。

 メジストも離れる時が近づいていたのを理解していていたのだろう。

 彼の手には作ったばかりの3つのスキルホルダーが握られていた。