冒険者昇格試験を終えた俺達は冒険者に囲まれていた。
実際は俺以外のロンとニアが冒険者に声をかけられている。
「まぁ、あいつらって強いもんな」
そんな様子を遠くから眺めていた。
「俺も頑張ったはずなんだけどな」
どこかに俺のことを褒めてくれる人が――。
「あら、ウォーレンちゃん寂しい顔をしてどうしたのよ」
そんな中やってきたのはローガンだった。
俺を元気づけようとして筋肉を強調させたポーズをいくつかキメていた。
さっきまで連続三戦したばかりなのに、全く疲れを感じさせないほど元気そうだ。
「そういえば、伝え忘れていたけど次は護衛依頼を他の人と受けてもらう予定になっているからよろしくね」
ローガンから渡されたのは隣の町まで商会を護衛しながら二日間移動するという依頼だった。
「護衛依頼ですか?」
「ええ、そうなの。ちょうど良いタイミングだから一度受けといてもらおうかなと思ってね」
俺としても護衛依頼の経験はないため、やっておく必要があった。
実際ランクをCランクに上げる段階で護衛依頼を受ける必要があったのだ。
護衛依頼と言っても今回みたいに街を移動するために護衛を雇う場合もあれば、モーリンやメジストみたいなお店をやっている人が直接採取に行くのを護衛する仕事など種類も様々だ。
「またこの日までに行ける準備をしておきます」
ロンとニアも冒険者からの勧誘に困っていたため、俺は二人に声をかけてロビンの屋敷に戻ることにした。
飲み会の後から保護者になっている俺が早めに帰るようにしないと、モーリンからの雷が待っている。
「オラはにいちゃとしかパーティー組まないからね?」
「私もお兄ちゃんだけだよ」
帰り道にロンとニアがずっと俺としかパーティーを組まないって機嫌を取ってきていた。
俺ってそんなに顔に出ていたのだろうか。
♢
「またなんとも言えない人を連れてきたわね」
久しぶりに私達の元にロビンと一緒に顔を出してきたのはローガンだった。
あの頃はまだ幼く可愛かった少年も、今はすこし頭がおかしい男となった。
「いやーん、モーリンちゃんも相変わらず綺麗ね」
私の扱いを一番知っているのはこの男だろう。
【鉄壁】のルイスに恋焦がれていた少女が、実は男だったと知った時には驚いた。
もうあの時の可憐な少年はここにはいない。
それだけ時が経ったのだろう。
「ちょっとモーリンさんに相談があってローガン……ローナを連れてきました」
昔からローガンと呼ぶと怒るのは変わらないようだ。
どこから見てもローナという見た目ではないが、私からしたら可愛い二人だ。
二人に私の元へ来た理由を確認すると、どうやらウォーレン達の冒険者昇格試験についてだった。
「みんな強かったけど違和感があるのよね」
能力としては一般的な冒険者よりも強い実力があるはずだが、どこか手に入れたばかりの力に振り回されているように感じると言っていた。
「ああ、それはあやつがあの子達にスキル玉を与えているからね」
私が近くで作業をしているメジストを指差すとローガンは理解したのか頷いていた。
あの子達には攻撃スキルがないため、スキル玉を与えすぎている影響が出ていたのだろう。
それも経験したら自ずとどうにかなると思っている。
「それであとは護衛依頼を受けてもらおうかと思ってね」
ローガンが出したのはCランクが受ける簡単な護衛依頼だった。
「まさか護衛依頼を持ってくるとわね」
冒険者昇格試験の依頼試験では討伐依頼や採取依頼など様々あるが、この護衛依頼は難易度も高い依頼だ。
そもそも人を守りながら依頼を達成しないといけないため、実際にポーターを守りながら戦うパーティースタイルに近い。
「良い勉強になるからいいかしら?」
ウォーレン達のことを思えばそれも良い経験だろう。
私達に確認してくるってことは、他にも何か問題あるのだろう。
「でもそれが問題じゃないんだよな」
ロビンは何か紙を取り出すとその名前を見て私は驚いた。
「これってまさか……」
そこに書いてある名前にある人物が脳内をチラつく。
私が知っている人物の中で同じ名で、手を焼いたお馬鹿ちゃんだけだ。
「ああ、従甥と従姪だな」
従甥、従姪っていうと次期国王の子供がちょうどそれに当たる人物だ。
「はぁー、ローナは何を考えているのよ」
「モーリンちゃんもため息つかないで。私もこの子達には手を焼いているのよ」
やはりローガンも手を焼いているらしい。
だって、あの子達の子どもだから仕方ない。
ローガンの話では次期国王が王族として視野を広げるために色々な経験をさせてほしいと頼まれたらしい。
貴族社会で王族だからともてはやされた王子は人種差別が酷い子に成長していた。
それをどうにかしてほしいと依頼されたのがローガンだった。
元々ロビン、ローガン、次期国王、あとドワーフの男が同じ冒険者としてパーティーを組んでいた。
自分の経験からもあって冒険者にさせたのだろう。
「はぁー、言いたいことはなんとなくわかったわ。ただうちのウォーレンもちょっと問題があってね」
問題があるのは王族だけではない。
ウォーレンも過去に色々あり、、新たな人間と触れ合うのは危険なことでもあった。
「ふふふ、それはなんとなくわかっていますわ。でも彼しか適任がいないのよ」
「何かあったのか?」
メジストは作業の手を止めた。
なんやかんやで一番ウォーレンを心配しているのはメジストだ。
「あの子みんなの前で私に変な金属を渡してきてね……えーっと魔剛アダマンタインっていう私も聞いたことないすごい魔力を放つ金属を出してね」
「はぁー」
私はその話を聞いてため息が出た。
また常識知らずがやらかしたのだと一瞬で理解できた。
それにしても私達が聞いてもいない金属をまだ隠し持っていたことに驚きだ。
「うおおおおお! それはあいつを問い詰めないといけないな!」
メジストは新しいおもちゃに興味津々のようだ。
「どこかルイス様とセリナさんの時と同じ感じがしてね。ウォーレンちゃんに任せてもいいかしら?」
今後のウォーレンを心配に思いながらも、私は困っているローガンを見て頷くしかなかった。
あの当時もどうにかなったから、今回もどうにかなると私は信じている。
実際は俺以外のロンとニアが冒険者に声をかけられている。
「まぁ、あいつらって強いもんな」
そんな様子を遠くから眺めていた。
「俺も頑張ったはずなんだけどな」
どこかに俺のことを褒めてくれる人が――。
「あら、ウォーレンちゃん寂しい顔をしてどうしたのよ」
そんな中やってきたのはローガンだった。
俺を元気づけようとして筋肉を強調させたポーズをいくつかキメていた。
さっきまで連続三戦したばかりなのに、全く疲れを感じさせないほど元気そうだ。
「そういえば、伝え忘れていたけど次は護衛依頼を他の人と受けてもらう予定になっているからよろしくね」
ローガンから渡されたのは隣の町まで商会を護衛しながら二日間移動するという依頼だった。
「護衛依頼ですか?」
「ええ、そうなの。ちょうど良いタイミングだから一度受けといてもらおうかなと思ってね」
俺としても護衛依頼の経験はないため、やっておく必要があった。
実際ランクをCランクに上げる段階で護衛依頼を受ける必要があったのだ。
護衛依頼と言っても今回みたいに街を移動するために護衛を雇う場合もあれば、モーリンやメジストみたいなお店をやっている人が直接採取に行くのを護衛する仕事など種類も様々だ。
「またこの日までに行ける準備をしておきます」
ロンとニアも冒険者からの勧誘に困っていたため、俺は二人に声をかけてロビンの屋敷に戻ることにした。
飲み会の後から保護者になっている俺が早めに帰るようにしないと、モーリンからの雷が待っている。
「オラはにいちゃとしかパーティー組まないからね?」
「私もお兄ちゃんだけだよ」
帰り道にロンとニアがずっと俺としかパーティーを組まないって機嫌を取ってきていた。
俺ってそんなに顔に出ていたのだろうか。
♢
「またなんとも言えない人を連れてきたわね」
久しぶりに私達の元にロビンと一緒に顔を出してきたのはローガンだった。
あの頃はまだ幼く可愛かった少年も、今はすこし頭がおかしい男となった。
「いやーん、モーリンちゃんも相変わらず綺麗ね」
私の扱いを一番知っているのはこの男だろう。
【鉄壁】のルイスに恋焦がれていた少女が、実は男だったと知った時には驚いた。
もうあの時の可憐な少年はここにはいない。
それだけ時が経ったのだろう。
「ちょっとモーリンさんに相談があってローガン……ローナを連れてきました」
昔からローガンと呼ぶと怒るのは変わらないようだ。
どこから見てもローナという見た目ではないが、私からしたら可愛い二人だ。
二人に私の元へ来た理由を確認すると、どうやらウォーレン達の冒険者昇格試験についてだった。
「みんな強かったけど違和感があるのよね」
能力としては一般的な冒険者よりも強い実力があるはずだが、どこか手に入れたばかりの力に振り回されているように感じると言っていた。
「ああ、それはあやつがあの子達にスキル玉を与えているからね」
私が近くで作業をしているメジストを指差すとローガンは理解したのか頷いていた。
あの子達には攻撃スキルがないため、スキル玉を与えすぎている影響が出ていたのだろう。
それも経験したら自ずとどうにかなると思っている。
「それであとは護衛依頼を受けてもらおうかと思ってね」
ローガンが出したのはCランクが受ける簡単な護衛依頼だった。
「まさか護衛依頼を持ってくるとわね」
冒険者昇格試験の依頼試験では討伐依頼や採取依頼など様々あるが、この護衛依頼は難易度も高い依頼だ。
そもそも人を守りながら依頼を達成しないといけないため、実際にポーターを守りながら戦うパーティースタイルに近い。
「良い勉強になるからいいかしら?」
ウォーレン達のことを思えばそれも良い経験だろう。
私達に確認してくるってことは、他にも何か問題あるのだろう。
「でもそれが問題じゃないんだよな」
ロビンは何か紙を取り出すとその名前を見て私は驚いた。
「これってまさか……」
そこに書いてある名前にある人物が脳内をチラつく。
私が知っている人物の中で同じ名で、手を焼いたお馬鹿ちゃんだけだ。
「ああ、従甥と従姪だな」
従甥、従姪っていうと次期国王の子供がちょうどそれに当たる人物だ。
「はぁー、ローナは何を考えているのよ」
「モーリンちゃんもため息つかないで。私もこの子達には手を焼いているのよ」
やはりローガンも手を焼いているらしい。
だって、あの子達の子どもだから仕方ない。
ローガンの話では次期国王が王族として視野を広げるために色々な経験をさせてほしいと頼まれたらしい。
貴族社会で王族だからともてはやされた王子は人種差別が酷い子に成長していた。
それをどうにかしてほしいと依頼されたのがローガンだった。
元々ロビン、ローガン、次期国王、あとドワーフの男が同じ冒険者としてパーティーを組んでいた。
自分の経験からもあって冒険者にさせたのだろう。
「はぁー、言いたいことはなんとなくわかったわ。ただうちのウォーレンもちょっと問題があってね」
問題があるのは王族だけではない。
ウォーレンも過去に色々あり、、新たな人間と触れ合うのは危険なことでもあった。
「ふふふ、それはなんとなくわかっていますわ。でも彼しか適任がいないのよ」
「何かあったのか?」
メジストは作業の手を止めた。
なんやかんやで一番ウォーレンを心配しているのはメジストだ。
「あの子みんなの前で私に変な金属を渡してきてね……えーっと魔剛アダマンタインっていう私も聞いたことないすごい魔力を放つ金属を出してね」
「はぁー」
私はその話を聞いてため息が出た。
また常識知らずがやらかしたのだと一瞬で理解できた。
それにしても私達が聞いてもいない金属をまだ隠し持っていたことに驚きだ。
「うおおおおお! それはあいつを問い詰めないといけないな!」
メジストは新しいおもちゃに興味津々のようだ。
「どこかルイス様とセリナさんの時と同じ感じがしてね。ウォーレンちゃんに任せてもいいかしら?」
今後のウォーレンを心配に思いながらも、私は困っているローガンを見て頷くしかなかった。
あの当時もどうにかなったから、今回もどうにかなると私は信じている。